やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

内閣府は知っていたパラオ海洋保護区の違法性

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平成28年5月19日、総合海洋政策本部参与会議の宮原耕治座長から、安倍晋三内閣総理大臣に対し、「総合海洋政策本部参与会議意見書」が手交

 

お名前を出してよいとのことなので、当方がこの9月に門を叩かせていただいた国際海洋法の権威は同志社大学の坂元茂樹教授である。

 

2008年から海洋問題を担当し、今年9年目に突入した。

体系的に学びたいと思いご連絡したところ、当方が昨年末、日本海洋政策学会で発表した事を覚えていてくださり、「喜んで相談にのりましょう」とお返事いただけ、お会いしたのである。

 

その時、坂元教授から、パラオのメガ海洋保護区がUNCLOSに反している事を指摘され、レメンゲサウ大統領が4年前に提唱してから誰もそんな事を指摘しなかった、特に海洋政策研究所とかまわりに海洋専門家は多いのに、しかも国交省、海保、外務省、水産庁等々海洋専門家との接触も多々あったのに、誰も指摘していなかった事がショックで、しばらく開いた口が塞がらない状態であった。

知っていればレメンゲサウ大統領やクアルテイ国務長官にアドバイスさせていただいていたであろう。両者とも20年以上の知り合いである。

 

オバマ大統領に説教するレメンゲザウ大統領(3)

yashinominews.hatenablog.com

 

パラオ政府が、少なくともこの3月突然亡くなられこの海洋保護区を国連を舞台に強く推進していたStuart Beckパラオ国連大使がこの問題を認識していた事を、パラオ大統領選を追う中で、偶々知る事となったのはこのブログに書いた。

これを坂元教授にご報告したところ、またまた驚愕の事実を教えていただいた。

内閣府にある総合海洋政策本部は昨年、パラオ海洋保護区の問題を協議していたのである!

国交省が、水産庁が、外務省が、はたまた海洋政策研究所が知らなくても内閣府は知っていた!

日本の海洋政策は大丈夫か?心配だったが内閣府が機能していたのである。

 

下記にコピーします。

 

内閣総理大臣 安倍 晋三 殿 総合海洋政策本部参与会議意見書

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kaiyou/sanyo/20160519/

添付資料

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kaiyou/sanyo/20160519/ikensho_betten.pdf

 

(1)海洋保護区等の設定に関する諸外国の新たな動き

海洋廃棄物投棄の規制など、既に国連海洋法条約だけでなく、各種国際約束で規定・規律されている事項も多い。これらも踏まえて、新たな動きに対応していく必要がある。

その上で、今後、海域利用について検討する際には、国際的な動きについても一層考慮を払うことが必要となってくる。顕著な例として、近年、諸外国において海洋保護区(MPA)に関する新たな動きがあり、こういった動きにどのように対応するかを検討する必要がある。特に一部の海洋保護区(例えば、パラオのMPA)では、若干の例外を除き一切の漁獲を認めないというような、国連海洋法条約の規定上疑義のあるものも出てきている。こうした動きに対し、国連海洋法条約に基づく議論を適切に展開すること、及び相互主義の意義を十分に勘案した上での対応を検討することが必要と考えられる。

 

それにしても、米国は、国務省は何をしているのか?

人材不足のパラオ政府を当方は責めない、が自由連合協定を締結する米国政府のパラオの対する責任は、明確に批判したい。