やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

在NZ日本大使館中井公使、ペン大学のディキンソン教授を正す(追記あり)

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国際日本文化研究センターとオタゴ大学共催の会議が開催され、気になる発表があったので参加。 気になったのは南洋をテーマにしたペンシルバニア大学、フレデリックディキンソン教授(上の写真左)の発表だ。

なんか、欧米に都合の悪い情報を出さない。 例えば日本が第一次世界大戦に参加する理由となった日英同盟や、米国の排日移民法、ベルサイユ会議で日本が提案した人種差別撤廃案否決。 発表の最後に第一次世界大戦を機に日本の海洋進出進んだ、まさに安倍政権に重なる、とワケのわからん事を言って、聴衆の学者さん達が頷いていたのは頭を抱えてしまった。

ああ、ディキソン教授、基本的情報知らずに語っている。矢内原、新渡戸の植民論も知らないだろうなあ、と聞いていてイライラしていた。

この会議には珍しく、朝から日本大使館の中井一浩公使(上の写真右)が参加。これは反日学会ではないですか!と当方は訴えた。第3,第4トラックは自由に云々、という回答であったので、いつもの外務省の反応だなあ、と思っていた。

ところがである。この中井公使がディキンソン教授に反論したのである! 日本の海洋パワーは第一次世界大戦以前から拡大発展していた、と。 私も、日英同盟の重要性をコメントした。 中井公使の反論を証明すべく家に帰って軍事費の統計資料を探した。 データは下記の 統計資料 歴史統計 軍事費(第1期~昭和20年)から。 https://www.teikokushoin.co.jp/statistics/history_civics/index05.html

1875から1937年までの軍事費の推移を予算と比率でグラフにした。海軍だけの予算が見つからなかったが、参考にはなるであろう。 中井公使の言う通り、第一次世界大戦以前、即ち日露戦争時に軍事費は大きく増額している。 第一次世界大戦で欧米諸国のSOSの要請に応えて増額した軍事費は、米国の軍縮要請に応えて減額した。

比率で見ればワシントン軍縮会議以降の軍事費は30%以下と1890年以前と同じレベルまで下がる。 そうだ。これで10万人の軍人が職を失い、恐慌が重なって、その結果の満州事変であるという事は筒井先生の講演にあった話である。逆に軍事費が増加したのは満州事変以後の事だ。 

 

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追記: 日本船主協会 日本の海運史から https://www.jsanet.or.jp/data/items/r_02.html#war1 英国が鉄鋼輸出を禁止し、日米が協力、しかし1919年以降海運界は低迷。