やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

気候変動と島嶼国

<科学的に何が証明されたのか?>

気候変動の件で科学的な証明は確定したのだろうか?とブログに書いたら白川 修さんという見ず知らずの方から下記のコメントをいただいた。この場を借りてお礼申し上げたい。

「気候変動の科学性は1988年に世界気象機関と国連環境計画により設立された政府間パネル(IPCC)のレポートで確認されています。これまで5回の評価報告書が発表され、2007年の第4次評価報告で90%以上、2023-14年の第5次評価報告では95%の確からしさで温暖化は人間活動によるとしています。」

早速裏を取る為にウェッブサーチ。環境省に興味深いコメントがあった。

下記の環境省が出すパンフレットには

IPCC第4次評価報告書(AR4)は、20世紀後半の世界平均気温上昇の主要因は、人為起源の温室効果ガスの増加である可能性が非常に高いと結論づけています。」

https://www.env.go.jp/earth/ondanka/rep091009/pamph_full.pdf

「人為起源の温室効果ガスの増加である可能性が非常に高い」

というのは白川さんが教えてくれた

「95%の確からしさで温暖化は人間活動による」

とは微妙に、違うのである。

<地球の気温の変化>

太平洋島嶼に人々が植民した歴史を学ぶということは数万年単位の地球の温度を、即ち海面上昇の件を学ぶ事なのである。

学ぶと言っても下記のモナシュ大学のデータを見ただけですが。

"Explore SahulTime"

http://sahultime.monash.edu.au/explore.html

まず海面がグインと上昇したのが2万から1万年前。この時期人類の二酸化炭素排出量はどうであったか?想像するに誰も電気を使っていなかったと思う。。

それから3万年以前の水面の動きを見ると不規則である。この頃も人類は電気を使ったりしてなかったはず。即ち地球の温度は人為以外の様々な要因で上がったり下がったり。。。

島嶼支援の哲学の問題>

気候変動に、人為起源要因に異を唱えているわけではない。

島嶼問題に関わって26年。

島嶼支援の議論の中で「あんな離島に住んでいるのが悪い」とこれは島嶼国政府高官、日本の自民党政策関係者など、から聞いた事がある。

このような意見が聞こえなくなったのは離島が形成するEEZの意義が認識され、そして中国やロシア等、非伝統的島嶼支援国の出現と重なるように見える。

立場を逆にしよう。

2万人の主権国家島嶼国が国外に支援を要請する正統性と正当性はどこにあるのか?

海面上昇、気候変動による被害者、自分達の資源である水産業で雀の涙程しか貰えないアンフェアな国際市場の被害者。と先進諸国の「被害者」としての小島嶼国の立場が形成されつつあると当方には見える。そしてそれが先進国と小島嶼国にとって健全な状況ではないのではないか?とも考えている。

E.H.Carrが『平和の条件』の中でCricis of Self-Determonationを議論しているように(一度読んだきりだ。難しくて理解できていないと思う。再読したい)ある民族的文化的グループの自決権を否定しないが、経済、安全保障は自決しない方が良い、すなわち大きな枠組みで対応した方が良いのではないか。とこれは新渡戸、矢内原の植民政策論を読み進めて、さらに確信を持って思うところである。