やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

水産庁取締船のシップライダーズ、遂に実施

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 日本の水産庁取締船、水産庁のウェッブから

http://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1508/mf_topics01.html

 

長い道のりであったが、とうとう日本の水産庁が派遣する違法操業取締船にパラオの法執行官が乗船し、パラオEEZの監視を行う、即ち日本版「シップライダーズ」が実施される事となった。

 

<月刊「正論」の記事の影響>

この事業をゼロから立ち上げた当方にとって、日本政府による(広義の)海洋安全保障支援の試みが頓挫するのは耐えられず、このブログだけでなく、月刊正論2016年12月号に記事を書かせていただいた。

この記事は産経ウェッブにも掲載され多くの読者を得る事となった。

改めて正論編集部、そしてご支援いただいた財団の皆様に感謝します。

 

南洋の親日国パラオ、ミクロネシアにも中国の触手が… 早川理恵子

http://www.sankei.com/premium/news/161119/prm1611190012-n1.html

 

<水産庁、法務省、外務省のコラボ!>

水産庁がパラオに派遣する取締船にパラオ法執行官が乗船し監視を行う。シップライダーズと言う。

これは米国沿岸警備隊がシーパワーのない小国、カリブ諸国、太平洋島嶼国で行っている方式である。

しかし、日本の法務省と外務省が待ったをかけたのだ。

当初、この3つの役所の非協力体制を目の前にした時、真面目に「日本は潰れる」と思った。

 

今回法務省が前向きに動いたようだ。そして良い事だからお名前をあげるが、当時の外務省和田大洋州課長もどうにか実施されるようにと努力されたのだそうである。(和田さんは出世して今は北米一課長)

日本のお役所。やれば出来るではないか。東大も出来る人材を育てているではないか。

もしかして戦後初の水産庁、法務省、外務省のコラボではないでしょうか。

 

<シーシェパード対策>

私がこの水産庁の取締船派遣に躍起となったのは理由がある。

2011年(しかもあの日3月11日)、パラオの海洋監視を目的にシーシェパードが入ったのである。

羽生前会長からその対策を私が一人任された。

もと国交省審議官の羽生氏の周りには優秀な国交省、海保職員がいるのではないだろうか?

いないのだ。優秀でも外国政府相手に手八丁口八丁、手練手管で情報操作できるような人材を東大は育てない。

 

ところでシーシェパード対策。当方の30年近い業務の中でもかなりハードルの高い業務であった。

結果、パラオ政府自らSSと手を切る事を決定。

羽生氏からは「やっぱり早川さんが財団で一番仕事ができるねエ。」と褒めていただいた、が二度とやりたくない業務だった。白髪10本は増えたはずである。

だから、二度とやらなくて済むように躍起となったのだ。水産庁を嗾けたのは私です。

 

<日本の海洋安全保障を担う2つの庁>

海洋安全保障活動。日本で今動けるのは海上保安庁と水産庁だけなのだ。

2011年のインポシブルミッションだったが、私的には6年越しの作業となった。

今完遂。