やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

海洋問題の勉強ーメガ海洋保護区

2008年にミクロネシアの海保案事業を立ち上げた時、それで自分の役割は終わりだろうと思っていた。情報通信政策で博士論文を書き出したばかりだったので、海洋問題を加えるのは自分の脳みその限界を超えていた。

それでも情報通信も海洋問題も太平洋島嶼国の立ち位置からは「広義の安全保障」「人類共通の財産」という点で共通する議論であり、そこに興味関心が維持できた。

気づいてみれば9年間も海洋問題にどっぷり、現場を中心に関与させてもらう機会を得た。

過去9年,手当たり次第に読んだペーパーや報告書は学術的、というより記述的だ。

体系的に学びたいと、昨年同志社大学の坂元茂樹教授に思いきってご連絡したところ、喜んで相談に乗りましょう、と予想もしない回答をいただいた時は歓喜を超えて呆然としてしまった。

今、坂元教授から教えていただいた「学術書」を読んでいる。

公海とEEZ、漁業の関係が少しずつわかって来たような気がする。

なによりもメガ海洋保護区の件だ。

後数年早く坂元教授にお会いできていたらパラオの海洋保護区は止めらることができたもしれない。

私はパラオのレメンゲサウ大統領に、その側近の閣僚達に、そしてこの案にいち早く支援を表明した羽生前会長に意見を、アドバイスをする立場にあったのだ。

ここ数日読んでいるのは『国際法の実践 ー 小松一郎大使追悼』(柳内俊二、村瀬信也著、信山社)に収められている坂元教授の「地域漁業管理機関の機能拡大が映す国際法の発展 ー 漁業規制から海洋の管理へ ー 」(p. 455−494)である。この章の482頁にパラオの海洋保護区の問題が指摘されている。

「余剰分の有無にかかわらず,EEZにおいて国内漁業しか認めない制度設計となっている点で、MSYを前提とする海洋法条約に抵触する可能性がある。」

UNCLOS62条の事である。この件は坂元教授以外はまだ誰も指摘していないように思う。

どうしてなのだろう?

海洋専門家は、PEWは、米豪日の政府高官は、UNCLOSを理解していないのではないか?

MSYとはMaximum Sustainable Yield(最大維持可能漁獲量)で検索すると色々な説明が出て来る。マグロの卵の議論もこれなのであろう。自然相手の統計は難しい、ということ?のようだ。

次回はインド洋チャゴス諸島のメガ海洋保護区を巡る、人権問題、植民地問題、軍事基地、ウィキリークス等々のトンデモナイ事件をまとめたい。