やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

メガ海洋保護区批判 - by Jones & Santo

広大なEEZや公海を海洋保護区にする事が、シルビアやクリスティーン等によって支持され、それが海洋政策の主流になっているのだろうか?と少々気落ちしていたが、しっかりと反対の意見が学術誌で議論されている。

芋ずる式に見つけた3つの論文を紹介したい。

 

 

最初はMarine Policyという1977年に創刊された学術誌の2016年11月号に掲載された論文である。

下記のガーディアンの記事で引用された論文である。ガーディアンの記事はオバマ大統領が発表したハワイのメガ海洋保護区は保護にならない、という刺激的なタイトルだ。

 

Hawaii and other big marine protected areas 'could work against conservation'

https://www.theguardian.com/environment/2016/sep/02/hawaii-and-other-big-marine-protected-areas-could-work-against-conservation?CMP=share_btn_fb

 

 

論文は「遠隔のメガ海洋保護区競争は我々を間違った道に導くか?」というメガ海洋保護区を批判的に書いた内容である。

 

Viewpoint – Is the race for remote, very large marine protected areas (VLMPAs) taking us down the wrong track?, Marine Policy, Volume 73, November 2016, Pages 231–234

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0308597X1630481X

 

著者はDr Peter JS JonesとDr Elizabeth De Santo。前者はイギリスのUniversity College Londonに在籍し環境ガバナンスが専門。サント博士は米国のFranklin & Marshall Collegeに在籍しこちらも環境ガバナンスが専門。

 

Dr Peter JS Jones

http://www.geog.ucl.ac.uk/people/academic-staff/peter-jones

Dr Elizabeth De Santo

https://www.fandm.edu/elizabeth-desanto

 

なお、このブログでは「メガ海洋保護区」と書いているがこの論文ではvery large marine protected areas (VLMPAs) になっている。論文によって記述はまちまちのようだ。

 

 

以下論文の要点をまとめる。

・現在24あるメガ海洋保護区が6千ある世界のMPAの62%の面積を占めている。

なぜか?

保護活動煽動組織(ピューのことであろう)やドナー団体が支援している。保護区は人が住んでいないかほぼ住んでいない遠隔地で利害関係を調整しやすい。即ち政治的コストがかからないからだ、と。

・科学的根拠を欠いたメガ海洋保護区は愛知目標の生物多様性保護の目的必ずしも一致していない。

・またメガ海洋保護区は監視が難しい。NGOなどが衛星技術を支援しているが、例え監視ができても違法操業取締活動は監視だけでは済まない。(そうそう。だから水産庁の取締船が必要!)

・世界の珊瑚の50%が人が住む場所から30分の距離にある。米国は13.5%、英国は22%のEEZが海洋保護区なっているというが、それは遠隔地の領土であって人が住む本土沿岸の海洋保護区は1%以下である。

 

結論

愛知ターゲットが10%であるの対して未だ3%しか海洋保護区は制定されていないが、その半分以上がメガ海洋保護区である。数値目標に政治的関心が集中するば生物多様性保護とは関係のないメガ海洋保護区が増えるばかりで、本来政治的関心とコストをかけなければならない、人が多く住み海洋に負担をかけている沿岸の小規模な海洋保護区の重要性が見失われてしまう。

 

こんな内容です。面白い!パラオの人たちに教えてあげたい!ピューは耳が痛いであろう!