昨年の9月、IUCNの海洋保護区の議論を追っていたら同団体の象牙を巡るメディア情報が眼についた。象牙問題は自分の関心とは離れているが、そのイエロージャーナリズムにも見える報道のあり方が気になった。
色々検索していたら下記の岩手県立大学金子与止男教授の英文のできたてのペーパーに辿り着いた。
Is Japan’s domestic ivory control inadequate? Prof. Yoshio Kaneko, Global Gardian Trust, 2016
http://www006.upp.so-net.ne.jp/GGT/GGT-publication.files/page1.files/Japan_ivory_control.pdf
先日金子教授から同論文の和文ができたと送っていただいた。
「日本の象牙国内規制は不十分か?」、自然資源保全協会、2016年 Japan_ivory_control_Japanese 2.pdf
知らない分野でもあり、急いで目を通した上記英文のペーパーは再度読まなければと思っていたのでありがたい。 日本の象牙市場を批判した米国NGO、環境調査エージェンシーのレポートは一見しただけでまともな内容ではない、すなわちイエロージャーナリズムの類いであると私でもわかるのにナショナルジェオグラフィック始め、東京新聞、産経までも、そして一部学者まで信用しているようなのだ。
そこに出会ったのが金子教授の論文だったので救われた気がした。 金子教授はスイスのワシントン条約事務局に1985年から勤務され現場にお詳しいようである。 同論文で金子教授は、日本の象牙規制制度に対する一連の環境調査エージェンシーの批判は「ほとんど根拠のないものであり、記者発表はマスコミを欺き、それにより世論を操作しようとする意図が明白である。」と厳しく非難している。
IUCNという組織が複雑である事も金子教授から少し伺ったが当方はまだ理解していない。
しかし上記論文の中で、1992年に京都で開催された会議でIUCNが以下の声明文を発表しているという。「NGOはその条約関連活動を締約国会議への参加と附属書改正提案に限定すべきでないと強調した。
さらに、NGOはその金銭的、人的資源を個々の締約国と協力して、条約の日常的な履行を推進し、支援するために使う必要があろうとも述べている。」(上記和文論文5頁) つまり環境調査エージェンシーが行ったような、扇動的で人を欺く行動をIUCNの声明は牽制しているのではないか。
他方で、環境調査エージェンシーの活動の背景にはイエロージャーナリズムに飛びつく「無知で感情的な市民」という存在がある事も考える必要があるのではないか? 「無知で感情的な市民」の動きはメガ海洋保護区や、今国連で議論されているBBNJの世論の動きとも関連して来るように思えるのだ。