やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

メガ海洋保護区批判 - by Davidson & Dulvy

メガ海洋保護区批判の2本目は鮫やエイの研究者による論文である。Nature Ecology & Evolutionからこの1月に出たばかりの論文。

 

Global marine protected areas to prevent extinctions

Lindsay N. K. Davidson & Nicholas K. Dulvy

http://www.nature.com/articles/s41559-016-0040?WT.feed_name=subjects_earth-and-environmental-sciences

 

Lindsay Davidson女史はカナダのサイモンフレイザー大学の博士候補。共著のDulvy博士は同じ大学の教授なので指導教官であろうか?

 

この論文もメガ海洋保護区に懐疑的である。これを軟骨魚類(鮫とかエイとかのようです。始めて知った)科学的数値で示している。

99の絶滅危惧種である軟骨魚類の半分が生息しているのは70カ国のMAPネットワークの3%でしかない。しかも上位12カ国にのみ、絶滅危惧種軟骨魚類の53種以上が生息している。

愛知ターゲットって、10%の海洋保護区制定目標以外に絶滅危惧種保護が上げられているけど、10%の数値目標のために、その事が見過ごされてるんじゃない?という主張のようだ。

 

この論文専門過ぎてわからない。が Dulvy教授はメディアに結構情報発信しており、Radio Canada Internationalのインタビューを見つけた。つい先週の記事だ。一般の人向けに話しているのでわかりやすい。

 

Marine protected areas for sharks and rays: are they working?

Thursday 26 January, 2017

http://www.rcinet.ca/en/2017/01/26/marine-protected-areas-for-sharks-and-rays-are-they-working/

 

Dulvy教授はメガ海洋保護区に懐疑的だ。実際多くのカナダ人科学者が世界的なこの動きに疑問の声を上げている。(そうだったのか!知らなかった)

現在世界にある15ある鮫保護区はメディアが取り上げた後、監視等何もされていない。

現在の海洋保護区の議論は保護活動派と石油などのエネルギー開発業者と水産業者のエリアの取り合いで、具体的な絶滅危惧種の保護の議論がない!

広さを重視する海洋保護区はペーパーパーク、即ち「張り子虎」で海洋の生物多様性を保護していないどころか、逆に絶滅危惧種に危険な動きである。

 

 

次回は下記の地政学に関連した海洋保護区のペーパーを紹介したい。

The rise of large-scale marine protected areas: Conservation or geopolitics?