やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

海洋保護区と「象牙の国際取引問題-保全への影響を再考する」 - 石井信夫(東京女子大学)

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象牙といえば私はピアノの鍵盤である。実は今持っている中古ピアノは象牙の様子。。

 

昨年の夏、ハワイのIUCN会議に呼ばれたパラオのレメンゲサウ大統領が同国の80%の海洋保護区について誇らしげにスピーチをしていた。

小国パラオが80%なのに米国はどうよ、とレメンゲサウ大統領がオバマ大統領に冗談半分に諭したようだ。下記にまとめた。

 

 

関連の記事を追っていたら、象牙の記事が多く出回っていた。しかも海洋保護区同様象牙を消費する日本を叩く環境NGOの感情的な内容だ。しかも英国王室や昭恵夫人まで象牙保護の姿勢を見せている。

 

それで、日本国内の専門家に聞いたところ、どんどん貴重な資料をいただく事ができた。関連のブログは下記にリストする。

 

その中のお一人、東京女子大学の石井信夫教授から昨年11月に出た下記の記事をご案内いただいた。

簡潔で、私のような素人でも分りやすい内容なのでシェアさせていただきたい。

石井教授は環境省の顧問として本件に関与されている。

 

象牙の国際取引問題-保全への影響を再考する - 石井信夫(東京女子大学)

「外交」Vol.40 Nov. 2016

http://www.gaiko-web.jp/test/wp-content/uploads/2016/11/40_117-121r.pdf

 

最後の石井教授の主張が、海洋保護区にもつながるように思うので長くなるが引用させていただきたい。

 「なお日本については、大量の違法象牙が密輸されて流通しており、アフリカでの密猟を助長していると主張するNGOもある。しかし上述のETIS報告にも示されているように、そのような証拠はなく、合法取引が違法行為の原因であるという自説に固執するあまり、事実を無視せざるをえなくなっていると言えよう。 こうした主張の背景には、保全上の効果にかかわらず野生動物の利用を忌避する考え方があると思われるが、国際条約は、特定の考えを他の締約国に押し付けるためではなく、各締約国の意向をできるだけ尊重し、その実現に協力することを目指すべきではないだろうか。」

 

私等は象が家や畑、時には人まで殺す害獣である事を知らなかった。

また野生動物保護と英国王室、即ち大英帝国の植民地遺産の影がある事、西表島ヤマネコを守るため島民退去を提案したエディンバラ公の存在等知る事となった。(この情報はまだ裏を取っていませんが)

「合法的取引が保全策になる」というのはまさに水産資源に共通する問題であろう。しかし誰がどのように監視するのか?これも共通の課題かと思う。

 

<以前書いた象牙の話>