引き続き、山本草二著『海洋法』から気になった箇所をメモしていく。(自分用のメモです)
II 海洋法秩序の発展過程
三 海洋法秩序の条約化とその発展 p30
p. 33 G77などは17、8世紀以来の「狭い領海」と「広い公海」の二部構成に立つ伝統的海洋法を改め、海洋の管轄・支配と利用の国際的配分を求めた。
p 33. G77などは既存の海洋法形成に参加していないので、これに拘束されないとし、今まで海洋法制度の合理性と適法性を支えてきた国際社会の基盤その物を争った。
p. 34 公海自由の原則は先進海洋国だけに利して、新興・弱小の沿岸国の自由参加と利益配分については犠牲を強いてきたというのが理由。
p. 34 G77が自らイニシャチブをとって成文の一般条約を作成し、従来の国際慣習法の無条件の適用を排除し、次の2点を主張した。
1.沿岸国の(途上国のだと思うが)独占権、優先的管轄権を認めさる。領海の拡大、EEZの設置、自然延長論に基づく大陸棚の確定がその例。
2.他方で先進国しか開発できない深海底の開発は国際機関を設置し管理運営への実質的参加と利益配分の権利を要求。
これは新国際経済秩序の原則の実現を試みたもの。
(ここら辺はBBNJの議論ろ変わらない)
p. 34 このような主張が途上国のエゴイズムという非難に終わらず、新海洋法条約の作成までに客観化できたのは先進国側も修正の必要を認めていたから。
(ア)航行・通過の自由や生物資源の適正な利用と保存、内陸国の地理的不利益の調整など、関係国の権利義務の微妙な配分とバランスに配慮する必要
(イ)技術革新による海洋資源の開発に対する利益の調整を先進国も必要とした。
(ウ)従前のように海洋管理を民間・企業レベルに任せる事はできなくなり、沿岸国、旗国、入港国などの関係諸国の権利を公平に配分し、義務を分担させる必要がある。(ここ、太平洋島嶼国の場合権利の便宜置籍船などの濫用や、義務が何もできない、という現実があるのではないだろうか?)
p. 37 東西南北陣営の対立。例:沿岸国は国家管轄権拡大を求め、漁業・海軍国は公海自由の原則に固執。内陸国は隣接国の生物資源参加権利を主張。
p. 37 海洋科学技術の利用と移転について、互恵・平等の相互主義の伝統をくずしても、特恵を確保しようとする途上国とそれに反対する先進国。(あれ?BBNJの議論ではないか)
p. 40 前略 海洋の国際法規は、海の実際の支配・開発・利用を通じて具体的に諸国により適用され遵守されてこそ、実定法として成熟するのであり、単なる理念やイデオロギーの性能テストの場ではありえない
この山本草二著『海洋法』は基本資料として何度も読み込んで行きたいが、次に栗林忠男・杉原高嶺『日本における海洋法の主要課題』(有信堂、2010年)にある「海洋法における「島の制度」再考」をメモしたい。