やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

山本草二『海洋法』三省堂、2001年

山本草二先生の『海洋法』は坂元教授から読むように4月にご指導いただき、一読したが、松井芳朗先生の自決権、天然資源の永久的主権に関する論文を読んでから、再読しようと思っていた。

海洋法が、戦後の、特に60年代以降の独立国の動きと一致しているからだ。

以下、自分のメモ用に記録しておく。

 

 

p1. はしがき

ー 海洋法は、数世紀以上に及ぶ歴史の経過のなかで、各時代の国家間関係を直接に反映させながら、安定と変動を複雑に繰り返してきた。

ー それじしん(海洋法)のなかに今後の海洋法秩序の形成にむけて変革と発展の要因をかかえ込み育てている。

(ここは下記にまとめた坂元教授の論文と共通)

yashinominews.hatenablog.com

 

本文

I 新海洋法秩序の形成

一 海洋法秩序の担い手

p1 採択(1982年)から発効(1994年)までの12年間の間に「各国は、同条約を正式に受諾するかどうかの態度決定とは別に、その一部を選んで国内法化したり、一方的な国内措置や個別協定により条約枠組みを崩そうとしたものも少なくない。」

p2 確立した海洋法を誠実に遵守するだけでなく、今後の海洋法秩序の形成にも積極的に参与できるように、国内法制を整える必要があった。

(太平洋島嶼国には国際法を遵守するという法的根拠があるのか?また関連国内法はどれだけ整備されているのか?)

 

p4 1960年代後半から、海洋科学技術の急激な進展と多くの旧植民地の独立の達成を契機として、海洋の利用と規制のあり方をめぐる国家間の対立はますます深まり、(以下略)

p4 とくに開発途上国の多くは 中略 これまでの領海・公海という単純な二部構成の他に、海洋の管轄・支配と利用の目的・機能別に海域を再区分することに、主眼がおかれた。

p4 領海外に沿岸国管轄権が及ぶ海域を新たに設定することとした。そこでは、領域主権に備わっていた包括的な内容を分解して、例えば海洋資源の開発、海洋汚染の防止、海洋科学調査、軍事利用の制限など 以下略

(海洋管理を地理的にも内容的にも区分したのは、開発途上国の誕生と緊密に結びついている。)

p4 他方、大陸棚はどの国の管轄権も排除し「人類共同財産」で管理しようと主張。利益は貢献度に関わりなく平等に配分。特に開発途上国はその特恵を供与すべし、と。

p4 開発途上国が一般的に政治的な独立と平等を維持するための裏付けとしてふりかざす経済主権の主張と結びついて(ここはまさに松井論文で議論されている箇所)以下略

p4 南北間の経済的格差の是正をねらった新国際経済秩序のイデオロギーとその具体的な表現である「国家の経済的権利義務憲章」など、同時の国際社会の構造を変革しようとする動きの一つのテスト・ケースともされたのである。

 

 山本先生がどんな方が存じ上げないが、「政治的な独立と平等を維持するための裏付けとしてふりかざす」とか「新国際経済秩序のイデオロギー」など松井先生の論調と違うような印象を受ける。より現実的で、私は山本先生の論調がしっくり来る。