やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

「海洋法における「島の制度」再考」栗林・加賀美(自分用メモ)

『日本における海洋法の主要課題(現代海洋法の潮流第3巻)』(有信堂高文社、2010年)に収められている第7章「海洋法における「島の制度」再考」(栗林忠男、加賀美康彦著)を再読した。

松井芳朗先生の自決権と天然資源の永久的主権の論文を読んだ後なので、問題意識が初回に読んだ時よりも明確になったような気がする。

以下、メモ。

第三次国連海洋法会議、第2会期(1974年)で、「一括派に属する立ち場として、南太平洋4カ国(フィジーニュージーランド、トンガ、西サモア)の提案は島国からの興味深い視点を提供する。同4カ国は、領海条約第10条1項と同一の島の定義を設け、島嶼国の島を含めたすべての島について、陸地領土に適用される規定に従って領海、EEZ及び大陸棚を決定するよう主張した。」(同署233ページ)

その後に続くニュージーランドの論理も興味深い。独立国のうち島嶼国は全体の30%。大陸部分に認められる領域が島に認められないのは不平等である、と。サモア、フィジーもそれに続いている。

そしてこれに他の島嶼国の共感を呼んだのだ。SIDSの起源か?

先進国には島を分類することに批判的な国が多かった。例えば英国、フランスだ。両国は多くの島を領土として抱えているから当然であろう。(235−236頁)

引用している小田滋教授のコメントが興味深い。

「領海の場合はともかく、沿岸国の排他的経済水域や大陸棚境界確定にあたって島がどのような意味を持つかは、理論的問題であるよりは各国の赤裸々な現実的利益を反映した経済問題であり、(中略)統一的草案の規定は手を触れられることもなく、本条約の条文に引きつがれたにとどまる」

ここは同教授の『注解国連海洋法条約 上巻』にあり、原典も確認した。

UNCLOSの島の制度に、太平洋島嶼国が積極的に関与している話は、当方の最初の博論でも若干取り上げた。漁業管理と情報通信の発展が繋がっているからだ。FFAとPEACESATのケースを取り上げたのだ。

これに関するニュージーランド外交官のペーパーも入手できた。

Chris Beeby, ‘The United Nations Conference on the Law of the Sea: A New Zealand View’, Pacific Viewpoint, September 1975