やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

インド太平洋構想と第3期海洋基本計画策定に向けた意見書

12月18日、総合海洋政策本部参与会議は、政府の今後の海洋政策の柱となる「海洋基本計画」への提言を本部長の安倍晋三首相に提出。

産経と日経がニュースにあげている。

海洋の安全保障強化を インド太平洋戦略加速へ 海洋政策本部

政治 2017/12/18

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24752500Y7A211C1EAF000/

次期海洋計画 安保前面 「インド太平洋戦略」明記へ

http://www.sankei.com/politics/news/171206/plt1712060011-n1.html

本文は下記の首相官邸ウェッブからアクセスできる。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kaiyou/sanyo/2017/sanyo_iken.html

ほとんどフォローして来なかったのであまり詳細な分析はできないが、確かに「安全保障」で検索すると69件出てくるが、「インド太平洋」は2件だけである。文章を読むと慌てて付け足したようにも読める。

それで思い出したのが、佐藤外務副大臣のブログだ。この策定意見書作成において外務省との擦り合わせが行われていなかったような様子なのだ。ブログの文章は短いので下記にコピペしておく。

特に下記の佐藤副大臣のコメントは重要だ。

「次期海洋基本計画と自由で開かれたインド太平洋戦略がバラバラに実施されるのでは、国益を損なう。両者の核となる部分は重複するところも多いので、是非連携を密にしながら内容の充実した海洋基本計画に仕上げてほしいと思う。」

今回発表された海洋基本計画策定案に「インド太平洋戦略」が盛り込まれたのは佐藤副大臣の提案があったのであろうか?

内閣府の総合海洋政策本部自体が省庁間の連携が図れていないのではないか?

国交省主導である事の限界は大きいように思うのは、国交省から笹川平和財団に出向している同省の官僚の能力の限界を観察してきた当方の率直な感想だ。

佐藤正久オフィシャルブログ」より

https://ameblo.jp/satomasahisa/entry-12326611237.html

自民党・宇宙海洋開発特別委員会の海洋総合戦略小委員会において、次期海洋基本計画策定に向けて検討を行っているメンバーから聞き取りを行った。

次期海洋基本計画を作成するために、重要事項について審議する民間の有識者を集めた参与会議が母体となって計画案を作成した。海洋の安全保障、海洋産業利用、海洋環境、海洋人材育成などから構成され、最終的には総合海洋政策本部長である安倍総理に提出することを目指す。特に佐藤も「高校生にも読んでほしい海の安全保障の授業(ワニブックス)」を上梓した経緯もあり、海洋安全保障については強い関心を持って動向を追っている。

一方、外務副大臣の立場として言えば、日本政府は「自由で開かれたインド太平洋戦略」を大方針に打ち立て外交を展開している。成長著しいアジアと潜在力の高いアフリカの活力を取り込むために、インド洋と太平洋を結ぶ地域全体で法の支配や市場経済を重視する国際秩序を構築し、域内の経済成長や海洋安全保障を目指すことがこの戦略の核心だ。次期海洋基本計画と自由で開かれたインド太平洋戦略がバラバラに実施されるのでは、国益を損なう。両者の核となる部分は重複するところも多いので、是非連携を密にしながら内容の充実した海洋基本計画に仕上げてほしいと思う。日本が主導して地域秩序の安定と繁栄に貢献する、貴重な機会になること間違いなしだ。