やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

バヌアツ - ミュージカル南太平洋の舞台から中国軍事基地へ(2)

 

バヌアツの中国認識

 

軍事基地建設の交渉のニュースを強く否定したのが、筆者の知人でもあるラルフ・レゲンバヌ外相だ。レゲンバヌ外相は非同盟運動メンバー国としてどの国の軍事化も支援しない、オーストラリアのメディアや政府の誤解であり、オーストラリアはドナー国として中国と協力してほしい、という強いメッセージを直ぐに出した。

 

Vanuatu foreign minister denies China military base claim

5:03 pm on 10 April 2018

https://www.radionz.co.nz/international/pacific-news/354699/vanuatu-foreign-minister-denies-china-military-base-claim

 

Vanuatu eyes conduit role to bring aid partners together

From Dateline Pacific, 3:04 pm on 12 April 2018

https://www.radionz.co.nz/international/programmes/datelinepacific/audio/2018640339/vanuatu-eyes-conduit-role-to-bring-aid-partners-together

 

 

しかし当方が気になったのはレゲンバヌ外相の次のコメントである。

バヌアツは世界で最初に中国の南シナ海領有権を支持した政府である。その理由を同外相は

 

「中国の南シナ海領有権をバヌアツ政府が支持したのは、国連海洋法とは関係なく、文化と歴史を基盤にして解決しようとしているからである。このことはバヌアツ政府がソロモン諸島政府とその海洋境界に関して解決した方法と同じである。」

 

と説明しているのである。南シナ海の中国領有権問題は地域の「文化と歴史を基盤」にしているのだろうか?またバヌアツとソロモン諸島の海洋境界問題は海洋法と関係ない、のだろうか?ここで詳細には入らないが、レゲンバヌ外相が認識している南シナ海の、すなわち中国政府の文化・歴史理解と海洋法理解に大きな疑問を持たざるを得ない。

彼の父親、セシー・レゲンバヌは国父の一人で、1988年笹川平和財団が開催した「太平洋島嶼会議」に参加し、その後同財団主催で北京にも訪問している。

 

 

 

中国の南シナ海領有権を支持したバヌアツのシャーロット・サルワイ首相は中国の軍事基地化を否定しつつも

 

「(エスピリト・サント島に)北京が支援した港湾は軍艦が寄港できるキャパシティがあるのはバヌアツのアイデアだ、そして人々を支援する事を目的としている」

 

とコメントしている。中国の軍艦は既にバヌアツに何度も寄港しているのだ。今後は中国が建設したエスピリト・サント島の港に大手を振って寄港できるようになるであろう。これは中国の軍事基地化そのものではないか?そしてそれがサント島の、バヌアツの人々を支援する事にもなる。

なぜか?