やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

京大1回生に学ぶ満州事変

満州事変を巡って横田喜三郎と立作太郎の見解が違った、と書いてあったのでそれこそ満州事変は国際法の解釈の世界なんだろう、これも国際法を博士課程で学んでいて知らないでは済まされないと急に思い立ち、ウェブサーフィン。

そこで見つけたのが京大法学部一回生4名による共同報告書だ。しっかりと対立する横田、立の意見をまとめている。(実は対立していないのだと思うがそれはもっと資料を読み込んでから)

目次は下記の通り。よくまとまっていて勉強になりました。それでも難しい議論で関係資料を読み込まないと理解できないな、という感想です。

全部で38頁なので知らない分野だがそれほど苦ではなかった。

http://www.hamamoto.law.kyoto-u.ac.jp/kogi/2009/2009pk-seminar/manshu.pdf

 

Ⅰ. はじめに

Ⅱ. 満州事変の概要

Ⅲ. 満州事変における法的問題点

A. 「満州国」と領土保全

1. 領土保全に関する条約

2. 軍事占領と建国運動

3. 日本側の主張

4. 満州国建国に対する評価と対応

B. 「自衛権」と武力攻撃の合法性

1. 自衛権の変遷

2. 不戦条約と自衛権

3. 満州事変と自衛権

Ⅳ. 戦争違法化体制の不備

A. 戦争違法化体制の歴史

B. 戦争違法化体制の制度的問題

C. 戦争違法化体制運用上の不備

V. どうすれば満州事変の拡大を阻止しえたか

A. 不備を踏まえて考え得る改善

B. 戦後の国際社会

 

最後に「もし」の世界を議論していて、これは指導した先生が偉いと思いました。(国際法の濱本先生か)ニュージーランドでは高校からこの教育方法を用いています。

そして確かに自衛権の解釈の問題であり、当時の国際政治の背景があり、中国のプロパガンダがあり。でも列強は結構日本側にいたわけだった、と知り。。

満州事変の事は新渡戸も矢内原も書いている。

そうだ、私が近現代史を学ぼうと思ったのは南洋統治の事もあるが、天皇陛下が満州事変以降の歴史を学べ、とおしゃっていたからだった。

「満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び,今後の日本のあり方を考えていくことが,今,極めて大切なことだと思っています。」

この筒井教授の講演記録からの引用も重要だ。

「しかし、この 21万人の人たちというのも、多くは日本に帰ってこられないような人たちだったのです。「帰ってくればいい」と言っても、大部分の人は日本国内ではもう行き詰まって生活ができなくなっているような人が、そこにいるということだったのです。後から考えてみれば 石橋湛山や大阪財界人の言うとおりにしていればよかったのですが、それは全部歴史の後知恵だからわかるので、そのときに21万の人に帰れと言ったって、帰るところもないんだからこれをやるのは大変なわけです。で、この 21 万人を守る関東軍の将校の間では、「ここで一か八か軍事行動を起こして日本の権益を守ろう」ということになってしまい、1931年に満州事変を起こすことになるわけです。」