やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

安倍総理蘭英訪問〜「東亜の解放」とはなんだったのか?

f:id:yashinominews:20190112123633j:plain

安倍総理の地球儀外交、インド太平洋構想が止まる所を知らない。

1月9−11日の日程でオランダと英国を訪問。両国のインド太平洋構想への参加を確認した。その他にも多くの協力が合意されている。

オランダと英国。インド太平洋に植民地を持っていた国である。「東亜の解放」で日本が追い出したのではなかったか?それを再びインド太平洋への関与を呼びかける皮肉。

日本が議論してしてきた「アジア主義」に関して、後藤新平も前向きだったので関心を持っている。日本の植民政策に関係しているのだ。この「アジア主義」に関しては波多野澄雄教授の論文が質が高いと渡辺昭夫先生の本にあり以前下記の論文を拝読。

「戦時日本の 「地域主義」 と 「国際主義」」
1996-11-30
 
「東亜の解放」とはなんであったのか?安倍総理の蘭英訪問で、再度この論文を読んだ。複雑な議論なので簡単にまとめられない。しかし敢えてまとめると近衛文麿のブレーンだった蠟山の東亜秩序は英米を敵に回すものであった。それに対し、重光・東郷など(この人物の分け方も難しい)東亜秩序は英米と平和的に発展する議論である。このような議論がどこまで戦争中の現地の軍部に届いて、理解され、実施されていたか、だ。
多分されていなかったのではないか?それが芦田が指摘した「情緒的反西洋主義が主観主義に陥り、始末に負えない傲慢と冷徹に転化」であったのではないか?

yashinominews.hatenablog.com

安倍総理のインド太平洋構想と今回の蘭英訪問で両国を「自由で開かれた」インド太平洋構想に招いたことを、矢内原、重光、芦田、そして彼らの師であった新渡戸が知ったらどう言うか?

「やっと日本はその大義を果たせた」

と言うのではないだろうか?それほど「自由で開かれた」インド太平洋構想と蘭英訪問の意義は大きいように思う。