やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

国連海洋法条約65条とIWC脱退

日本のIWC脱退が国際法違反であるという「有識者」のコメントがメディアでも取り上げられていて、国際海洋法を学ぶものとして確認だけでもしておこうと、国連海洋法条約65条関連の論文を拾って読み出した。これが非常に興味深い。

動物愛護団体のPatricia Forkan女史のペーパーに続きSteven Freelandの下記の論文を読み終えた。ますます国際法違反であるという「有識者」は65条の議論を知っていてメディアに言ってるか疑問に思えてきた。

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Freeland, Steven  Western Sydney University  Drysdale, Julie "Co-operation or chaos? : Article 65 of United Nations Convention on the Law of the Sea and the future of the International Whaling Commission". Macquarie journal of international and comparative environmental law.   Vol. 2, no. 1 (2005), pp. 1-36

上記 FreelandのペーパーはIWCの複雑な歴史的流れがわかる。その中でも気になったのがIWC の動きの中に環境NGOと国際コミュニティ(って誰?)が入り込んで来た事だ。この件に関する詳細は書かれていない。

そして米国は豪州、英国、ニュージーランドと組んで反捕鯨だったのが、徐々にその姿勢を崩して来た事だ。その背景にはロシアや国内先住民の捕鯨問題がある。

日本のIWC脱退は今に始まった事ではなく、80年代からその可能性は検討されていた。だからこその65条のOrganization にs を付けて複数形にしたのであろう。

IWC以外の捕鯨管理組織としてNAMMCOだけでなくFAO, UNEPなども国連の法律事務局が示していることなども興味深い。

以前のブログで書いた65条にある"through the appropriate international organizations" の解釈もコンサルテーションという程度の意味から「従わなければならない」というように巾がある。よって日本の有識者(小松氏を含め)この条文をもって国際違反と主張するのはどのような根拠があるのか興味深い。まさか彼らがこの議論を知らないで主張していると思えないし、思いたくない。

執筆者Freelandのポジションがわからないが、西シドニー大学ということで、もしかしたら反捕鯨なのかもしれない。そうではないかと思ったのは、結論で「環境原則」を優先せよと主張しているからだ。しかしこのペーパーで環境原則と国際法の議論は一切されていない。(と思う。飛ばし読みなので見過ごしているかもしれない)

UNCLOS65条の議論。思ったより面白い。

Patricia Birnieのペーパーが手に入ったので次はこれをまとめたい。

 

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