やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

チャゴス判決(3)モルジブの動き

チャゴス判決を、即ちモーリシャスにチャゴスを返還するようICJが判決した事に対し、国連決議で113カ国が指示。反対が6カ国いた。(日本は棄権した54カ国に入っている。日米同盟はいいのか?)

この反対の中に興味深い国が2つある。モルジブとハンガリーだ。米国、英国、豪州、イスラエルはわかる。なぜモルジブ?

ウェブ検索で拾った興味深い記事があった。Maldive Independentという新聞だ。

maldivesindependent.com

チャゴスの人々は1973年までにモーリシャスとセイシェルに夫々、1560人、1754人送られている。モルジブはチャゴスより500キロほど北に位置し領土問題はない、とどこかで読んだ記憶があるが。。違うようだ。

モルジブの外相のコメントは同国の領土を狭める憲法と国内法に疑義があるいかなる申請も受け入れない、とある。

The foreign ministry said in a statement Thursday that the Maldives could not support any proposal that diminishes the country’s territory as laid out in the 2008 constitution and domestic law.

2010年に国連海洋法条約に則った大陸棚申請で両国の紛争が発生したのだ。ちょっと詳細がわからないが、モーリシャスがチャゴスを返還される事で、即ち脱植民地化の理由で、モルジブの大陸棚申請の立場が脅かされる可能性がある、ということか。加えてチャゴスの不安定な状況はインド洋全体の安全保障にも影響を及ぼす、と。それはそうだ。モーリシャス政府が安定しているようにはどう見ても思えない。*

"should not be construed as a vote or a position taken against the co-sponsors of the resolution, with whom we have excellent relations"

ここはわからない。

 

2010年にイギリスがチャゴスの回りのEEZを海洋保護区に制定したが、これに対し、モルジブは法的権利も合理性はないと反対。モーリシャス政府もこの制定に対して反対している。

 

さてチャゴス(というか英国)とモルジブの間にある大陸棚紛争。探したらこんな記事が出てきた。モルジブの大陸申請に対し、英国が速攻で反対意見を出した。チャゴスの人々は英国政府は人間より大陸棚が重要なんだ、と反感を持った。。

www.theguardian.com

モルジブは英連邦諸国から、腐敗、人権問題で圧力をかけられ、2016年に英連邦から脱退。しかし2018年には英連邦再加盟を申請している。政権が変わったと思うが。

www.theguardian.com

thecommonwealth.org

京大の濱本教授がボツワナ政府の弁護人としてモーリシャスのICJへの訴えを支持しているのだが、こんな複雑な背景は全て理解しているんだろうな。私が片手間でちょっと調べただけでこんなボロボロ複雑な背景が出て来るのだ。多分氷山の一角。それにしても虎8の無知の無知は罪深い

www.hamamoto.law.kyoto-u.ac.jp

*モーリシャスがどんな国か。日本大使館(があるんだ!)の面白いレポ−トがあった。

汚職はあるわ、麻薬取引は横行しているわ、最近ではパラダイス文書のおかげ で EU などからタックスヘイブン地域として限りなくクロに近いグレーな国とし て見られるなど散々ではありますが、国際場裡でキラリと光る一定の存在感を みせているのも事実。世界の小島嶼国の星として頑張って欲しいものです。

https://www.mu.emb-japan.go.jp/itpr_ja/vol.8.pdf