やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

ニューカレドニア便り(5)西パプア、カナク、ブーゲンヴィルの分離独立

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西パプアを結ぶインフラ計画

 今回の会議は、西パプア、ニューカレドニアの先住民カナク、そしてソロモン諸島のブーゲンビルと、今まさに分離独立の動きがある地域の、しかもその研究というより運動をしている人たちの発表が半分くらいあったように思う。正確には「研究」という名目で分離独立を支持する内容だ。「自決権」「植民」「国連決議1514号」などについて発表の中で何度も使用してもその意味、歴史的背景を客観的に議論していない。

 

 学会に参加した日本人は私だけであった。

「日本から来たの?じゃあ沖縄の反基地活動の誰それは知っている?」

「日本の女性団体と協力しているのよ。ナントカ平和と自由を目指す女性組織。知っている。」

私「知っている。裏で中共が支援しているから注意しなさい。それに自決権は美しい言葉だけれど30年間太平洋島嶼国を見ていてそうでない事を太平洋島嶼国の方達から学んだのよ。それを発表するから聞いてね。」

その後、なんとなく距離を置かれてしまった。

 

 この太平洋島嶼国の分離独立という非常にセンシティブな内容を、それが行われているニューカレドニアで開催するのってすごいなあ、と思っていたのだが、支援しているのはオーストラリア政府である。勿論オーストラリア外務省の人も来ていた。感想を聞きたかったが機会を失った。

 発表の中で西パプアのインフラ開発を紹介する内容があった。すごい勢いで港、商業施設、道路が韓国、中国、日本からの支援で作られているのだ。しかもその道路は鉱山現場を結ぶ道路で地元民には裨益していない、という。後で聞いたら保障はされているのだそうだがその事を発表では取り上げていない。被害者としてしの西パプア人しか描かないのだ。

<関連記事>

Why is the Indonesian government today building so much infrastructure in West Papua? - Quora

https://www.quora.com/Why-is-the-Indonesian-government-today-building-so-much-infrastructure-in-West-Papua

 

 西パプア問題は独立派に友人がいるため自分の問題のように捉えている。インドネシア軍の虐待は今でも続いている。しかし西パプアが独立した後どうするのか?それに欧米メディアはいたずらに分離独立を煽り立てているようにも見える。そういう記事は売れるのだ。しかも沖縄反基地活動と繋がっている。

 分離独立運動自体が目的になってしまっている。そんな印象を強くした。

 現在西パプアの人口の半分がインドネシア軍で占められているという。オランダから独立したインドネシアによる新たな植民である。西パプアの独立を進めるグループは日本軍と戦ったオランダ政府と近い(利益を共にしていた)人々である。日本の戦争目的だった「東亜の解放」にこのような現地事情の視点が欠けていた可能性はないだろうか?

 

<追記>

 学会には中国人の国際法学者もいた。私と同じく海洋法を専門とするLili Song博士。

突然「あなたは随分リッチな太平洋での経験があるのね。」と言われた。

調べているのだ。すごい。私は自分の活動をそんなに外に出さないようにして来た。笹川太平洋島嶼国基金の文章は全て私が書いたものだが、名前を出していない。もしくは幹部の名前にしてある。

 急遽反省してLili Song博士の背景をウェブサーチ。ニュージーランド、バヌアツ、論文も多く書いている。日本で太平洋島嶼国のことを知っている国際法学者はいない。Song博士、いつかは中国に帰るのだそうだ。中国はすごい。