やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて30年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

ニューカレドニア便り(1)

 ニューカレドニア、に来ている。オーストラリア国立大学が主催する学会にダメモトで出したペーパーが通ってしまって、どうしようか迷ったが、私の博論のコアの議論「自決権」がメインテーマの学会だったので思い切って参加することにした。

  ここ、ニューカレドニアのヌーメアの南の海岸線アンスバタはかつて日本軍を迎えるための後方基地(だと思うのですが)があり、米軍が乗り込んだ場所である。これも多分だがその基地を利用する形で戦後1947年に太平洋の地域機関の南太平洋委員会、South Pacific Commissionが創設された。通称SPC。赤道以北の北太平洋の国々も参加するようになって名称が変更された。2000年以降だと思う。同じSPCだがSecretariat of Pacific Communityだ。

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 笹川太平洋島嶼国基金は、財団の他の基金同様、ほとんど事前の調査をせずの立ち上げてしまったのだ。金の力は恐ろしい。見事にこけた島嶼国基金を再興させたのが私だが、最大の課題は、当初カウンターパートとした南太平洋フォーラム(これも今は「南」が抜けて太平洋諸島フォーラムに変更)との関係解消であった。フォーラムは政策を議論する場所で具体的事業を行う組織ではない。草の根で具体的事業を行うのはSPCの方なのだ。

 兎にも角にも、キリバスのタバイ大統領が南太平洋フォーラム事務局長になって、この問題は解消された。(というか私が解消させたのである。一人で。誰の指示も受けずに。)

 もう一つ、島嶼国基金には縛りがあった。基本的に1カ国の事業ができないのだ。地域協力を推し進める、という方針があった。理由は簡単だ。1カ国に対応するとなぜ他の国から申請があった時の断る理由を探すのが難しいからである。そうすると結果的に笹川太平洋島嶼国基金が相手にするのは南太平洋大学とか南太平洋委員会になるのである。

 基金のリフォームを済まして、私はこの2つの国際組織との事業を展開していった。まだ20代だったんだな〜。誰も私が一人でやったとは信用できないであろう。今思い返すと本人の私ですら信じられないのだから。

 

 思い出すと芋づる式に出てくる。

 私はここ、ヌーメアに何度か足を運んだ。勿論SPCとの協議のためだ。結果として太平洋青年協議会を設立することとなった。繰り返すが笹川平和財団の幹部は誰も太平洋諸島のことを知らないし、ましてや青年問題、組織づくりさえ知らないので何も指示を受けたことはない。逆に青年事業を見下しており、この事業は低く評価された。

 私は財団に入る前より内閣府の青年行政の関係組織(日本国内組織とアセアンと国際組織)の幹部でもあったので、業務指示は不要であった。国際組織づくりで何をすれば良いかすぐにわかったからだ。

 新組織設立、というのは意外と簡単にできる。問題は継続、運営である。アップダウンはあるようだがこの太平洋青年協議会、今でも活発に動いているようで、こんなに嬉しいことはない。太平洋青年協議会のサイトに笹川平和財団の支援で、あるが早川財団に変更して欲しい。(冗談)

www.pacificyouthcouncil.org

 

 ヌーメア。何年振りであろう?常宿だったルラグーンは、改装されて高級ホテルになっている。以前はボロ宿で比較的安く、SPCが隣にあったのだ。このホテルのオーナーはベトナム人のおばあさんでロビーやベランダに蘭の花をたくさん育てていた。おばさんが育てていたのかどうか、確信はないが、一度私が顔を近づけて蘭の花を見ていたら怒られてしまったのだ。そんな経験もあってこのホテルは、SPCの事業の思い出と共に特別の場所だ。

  今回、ニューカレドニアに着いて最初に驚いたのがどこもかしこも日本語ばかりであること。中国語・韓国語が皆無。昨晩散歩した道で会うのも日本人ばかりだ。ここには中国からの直行便はなく、逆に日本からは大阪を含め直行便が毎日飛んでいる。中国に恨みがあるわけではないが、どこに行っても中国語で覆われ、しかもその拡大傾向は留まるところを知らない。ここニューカレドニアもニッケル工場に中国の手が伸びて、独立問題の背後に蠢いている様子。どれほどニューカレドニアは中国の手に落ちているのか、と不安に思いながらの訪問であったので意外であった。

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 ルラグーンホテルのロビー。不思議な日本語に出くわす。

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世界最大のニッケル鉱山があるニューカレドニア。ここにも中国の手が。しかも独立運動の背後で蠢いている。

 アンスバタの一等地にあったSPCはヒルトンホテルに変わっていた。国際機関が観光地の一等地にある必要はなく、いい値段で土地を売却したのかもしれない。幸い、新しい事務局は近くである。ここも訪れる予定だ。SPCは海洋問題も扱っている。

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SPC跡地に建てられたヒルトンホテル