やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

ニューカレドニア便り(6)日仏海洋協力

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ニューカレドニアでこのニュースを聞けるとは思わなかった。

安倍総理とマクロン大統領が歴史的な合意をしたのである。しかも特にインド太平洋の海洋協力は私が以前から安倍政権の主張してきたことである。

なぜフランスの海外領土管理に日本が協力しなきゃならないの?

1)フランスは米国に次いで世界2位のEEZを持っているがその98%(確か)がインド太平洋にある。しかしその管理はほとんどされていない。

2)太平洋の仏領に関しては中国の進出が目覚しい。佐藤外務副大臣が指摘していた中国の宇宙開発とも関係している。他人事ではないのだ。

3)太平洋の仏領はフランス核実験を巡ってニュージーランド、豪州と長らく敵対関係にあった。ここ10年英語圏と仏語圏は接近したがその壁はまだあるし、何よりニュージーランド、豪州の海洋能力には限界がある。だからマクロンは安倍総理の協力を求めているのだし、その判断は正しい。

 

加えて今回の合意には自分の博論にも関係してくるBBNJが盛り込まれていることだ。

「特別なパートナーシップ」の下で両国間に新たな地平を開く日仏協力のロードマップ(2019-2023年)にあるインド太平洋協力の3点目だ。

3- 両国は、包括的海洋対話を通じ、海洋ガバナンス、科学技術・イノベーション、海洋安全保 障、環境ブルーエコノミー等の分野において、特にインド太平洋における共同プロジェクト を特定し、具体化する。両国は、海洋保全、並びに国家管轄権外区域における海洋生物多様 性(BBNJ)の保全及び持続可能な利用に関する将来的な国際約束の交渉に関する連絡及 び協力を国連の枠組みにおいて強化し、可能な限り早期の交渉妥結に向け積極的に貢献する ことにコミットする。両国は、東南極地域における海洋保護区の設置に関し、適切なフォー ラムでの議論を継続し、南極における海洋生物資源の保護及び持続可能な利用に関する多国 間協力を継続することで一致する。両国は、本年下半期に第1回包括的海洋対話を開催する 予定。

 

BBNJの協議がされている最中に海洋に関する重要な2カ国が先導してこのようなコミットメントをすることは好ましい。というかそれを私は博論の中で議論しようと思っている。かなり乱暴に書くと小島嶼国は海洋資源を得ながらそれを自ら開発も管理もできず、権利や利益を限りなく要求するだけなのだ。これはあらゆる意味で危険である。島嶼国自身にとって不健康でさえある。世界第二位のEEZを保有するフランスはEEZが少ししかないドイツに海洋生物技術開発(正確な表現は後で確認)から大きく出遅れている。そのフランスが小島嶼国を唆す形でBBNJ(これも簡単に言うとEEZの外の海洋資源の権益を巡る途上国と先進国の攻防戦)の協議が始まったとも言える。

 

まさかニューカレドニアでこの吉報が聞けると思わなかった。この合意文書、かなり濃い内容なので、日本に戻ってからしっかり読み込みたい。