やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

ハンナ・アレント『革命について』(2)

f:id:yashinominews:20191113081458j:plain 1959年プリンストン大学の「合衆国と革命精神」と言うセミナーでアレントに与えられたテーマで、1962年にこの本が出版されている。ケネディ大統領誕生翌年であり、キューバ危機の年。1963年、ケネディを暗殺した米国をアレントはどう思ったであろう?

 まずは訳者の志水速雄の「あとがき」、と川崎修氏の「解説」から。

下記はウィキ情報だが志水さんはすごい人だ。50歳の短いでもかなり太い人生を歩まれた様子。こういう人生に私は憧れます。

志水 速雄(しみず はやお、1935年9月15日 - 1985年3月24日)は、日本政治学者。専門は、ロシア政治論。

1960年の安保闘争時に全学連国際部長を務め、筋金入りの闘士だった。巣鴨を出たあとは清水幾太郎(当時、学習院大学教授)の現代思想研究会に入ったが思想上の整理がつけられず、明治大学大学院で5年間、ソ連問題と政治学を研究。その後は対ソ警戒論を論じた

アレントを訳したのは思想の整理をしている最中かもしれない。

川崎氏はアレントの研究者だ。実は数年前ハンナ・アレントの映画を観たので彼女のことは少し関心があった。アレントの研究者が日本にいるのだ。スゴイ!

川崎 修(かわさき おさむ、1958年 - )は、日本の政治学者立教大学法学部政治学科教授.元法学部長。専門は政治思想史ハンナ・アーレントの研究で知られる。

 

 訳者の速水氏は 1968年にこの本を翻訳しているが出版社の都合で絶版になっていた。アレントの『人間の条件』も速水氏が1973年に翻訳。アレントのことを「特異な政治哲学者」と形容している。この本はフランス革命が失敗で、アメリカ革命が成功であると主張する根拠の説明である、と。そしてアメリカの成功は権力の抑圧を回避するための消極的な自由(liberty)ではなく、権力に加わる積極的自由(Freedom)である、と。そしてフランス革命が失敗に終わったのは目的が自由の構成から貧者救済の社会問題に転換したことを理由に挙げている。アメリカは革命以前から豊かな国であったのだ。よって社会問題よりも自由体制作りに努力を集中できた。速水氏がアレントが一切触れないアジアの例を出して革命がいずれも自由の抑圧に終わっていることを問題提議し、「アカデミック」な解はない、と書いているところが印象に残った。というかここは私と似通った問題意識である。アカデミックな解はあると思っている。そして革命の中で生まれた「小共和国」がどれも短命で終わっていることが最後に議論されているが、まさにこれが私の研究課題の小島嶼国の存在である。

 次にアレント研究者の川崎氏の解説。この解説は私のような一般の読者には難解なのではないだろうか?何を言っているかほとんどわからなかった。

 私のルソー、マルクス、シュタインあたりの表層的理解だと、要は平等や自由のために暴力を許すか許さないか?伝統を壊すか守るかで(その時の伝統は変化を受け入れるという伝統も含む)そう考えれば米国は100年以上の植民の歴史を基盤とした豊かな社会(インディアン虐殺もあったようだが)を守るための革命であったのに対しフランス革命は伝統を破壊した勢力は守る規範、社会がなかったのではないか?あったのは貧困だけ。貴族、ブルジョアを殺し富みを奪っても貧困問題は解決しない。即ち社会は成立しない。。

 さあ、本文に移ろう。。