やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

ミクロネシア連邦米軍受け入れの意思、なし?

ミクロネシア連邦のパヌエロ大統領がラジオニュージーランドの取材を受けて10のポイントを話した。それぞれ興味深いが、先日ハワイのインド太平洋軍を訪ね、米軍との関係が強化されるか、と思っていたのだが、どうも違うようだ。

Ten questions: Micronesia's President David Panuelo fronts up | RNZ News

 

「米国がミクロネシア連邦に軍のプレゼンスを拡大しようとしていることについては、多くのことが語られ、書かれており、軍事基地を受け取ることになるだろうという見出しが付けられています。しかし、私の大統領声明と見出しの一致を見ていただければ、私がハワイ州を訪問して高官レベルの防衛協議を行った直後に、米国準州であるグアムにも足を運び、新たに「ミクロネシア沿岸警備隊」と名づけられた3隻の米国沿岸警備隊のカッターを就役させたことがお分かりいただけると思います。これらの沿岸警備隊は、捜索・救助活動を通じてミクロネシアの人々の命を救い、また、ミクロネシアの海で行われる違法漁業の取締りにおいて重要な役割を果たしています。ミクロネシアにおける沿岸警備隊のプレゼンスを高めることは、地域の安全保障、特にミクロネシアの安全保障を安定させ、向上させるものであり、米国は改正された自由連合規約に基づいて提供する義務があります。」

米軍を受け入れない、とは言っていないが、沿岸警備隊を受け入れたと明言している。米国は日本と違って沿岸警備隊と海軍が常にいっしょに行動しているとはいえ、パラオと比べるとかなり違う対応だ。

もう一箇所、日本の自衛隊、AUKUSを並列して語っているところも気になる。両者は中国にとって懸念材料だろうが、パヌエロ大統領は歓迎の姿勢。

「日本が自衛隊を強化しようとしていることについて、多くのことが語られ、書かれています。日本は、北朝鮮の密入国者の犠牲になったり、北朝鮮のミサイル攻撃の脅威の対象になったりしています。さらに、日本はミクロネシアと同じように漁業に依存しているため、Free & Open Indo-Pacificにコミットしています。これは地政学的なヒートアップの兆候ではなく、国民の安全を守るために義務を果たそうと努力する優れたリーダーの兆候なのです。AUKUSが地域の安全保障を向上させるのと同じように、日本の自衛隊がより多機能になることで、地域の安全保障が安定し、向上するのです。」

中国に対してはかなり宥和的なコメントである。他方ミクロネシア連邦が米国との自由連合協定締結35周年を祝う事を同時に述べているのは中国への牽制であろうか?

「中国共産党が創立100周年を迎え、10月1日に国慶節を迎えたことは記憶に新しい。習近平国家主席は平和主義者で、中国のために最善を尽くしたいと考えていますが、中国国民に対しては中国の領土保全を守る義務があり、ミクロネシアは「一つの中国」政策を支持しています。11月3日の建国記念日には、ミクロネシアの独立35周年と米国との自由連合35周年を記念して、大々的なスピーチを行う予定です。」

Coast Guard Forces Micronesiaの動きも気になる。下記の海軍との協力、中国への対応の箇所を読むと沿岸警備隊とはいえども明確な対中の動きであろう。

Coast Guard Sector Guam Rebrands Itself During Cutters' Triple Commissioning Ceremony | Military.com

www.military.com

沿岸警備隊によると、最高速度28ノット、5日間の海上滞在が可能で、航続距離は2,500海里を超えるという。

海軍、海兵隊、沿岸警備隊は12月、中国の「米国の海洋力の核心を狙う修正主義的アプローチ」に対応する三軍の海軍戦略「Advantage at Sea」を発表しました。

北京の戦略は、海軍、沿岸警備隊、海上民兵の艦船を多方面に展開し、「他国の主権を破壊し、不法な主張を実行する」ことにあると報告書は述べている。

報告書は、西太平洋における沿岸警備隊の存在をより強固なものにすることで、武力衝突の閾値以下にとどまる中国の「グレーゾーン」の対立に、統合部隊の指揮官がより柔軟に対応できるようになると示唆している。

 

They can reach speeds up to 28 knots and remain at sea for five days, giving them a range of more than 2,500 nautical miles, according to the Coast Guard.

In December, the Navy, Marine Corps and Coast Guard issued Advantage at Sea, a tri-service naval strategy responding to China's "revisionist approach that aims at the heart of the United States' maritime power."

Beijing's strategy hinges on the use of a multipronged deployment of ships from its navy, coast guard and maritime militia "to subvert other nations' sovereignty and enforce unlawful claims," the report said.

The report suggested that a more robust Coast Guard presence in the Western Pacific could provide joint force commanders greater flexibility in responding to China's "gray zone" confrontations that remain below the threshold of armed conflict.