やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

浅野豊美著『帝国日本の植民地法制』読書メモ

ここ数日浅野豊美先生の『帝国日本の植民地法制』を読んでいる。確か浅野先生の博士論文で、ご本人からいただいたはずである。その厚さに圧倒されて飾ってあった。5センチほどある。

帝国日本の植民地法制 « 名古屋大学出版会

 

それと日本の植民地を扱いながら南洋統治領まではカバーされなかったので、浅野先生の下記の本は何度が読ませていただいている。読んだだけではなく、恩師渡辺昭夫先生の関係で、本の表紙の写真を提供させていただいている。

なぜ、急に手に取ったかというと今本棚の整理をしていて出てきたのである。多分神様のお導きで読め、ということだと思う。そこには後藤新平が出てくる。そして棒線が引いてあった。私は過去に読んだのだ。読んだ事も忘れていた。

第一編、4章、3の「後藤新平の構想」には

 後藤の「科学的統治」が大東亜共栄圏建設の時代における民族政策樹立のモデルとして呼び覚まされる様相については、本書第Ⅴ編で触れられるであろう。(116ページ)

とあり、本書第Ⅴ編をざっと読んだが、蠟山と小磯などが出てきて後藤との関係は書かれていないようである。見過ごしているのかもしれない。さらに第一編、4章、3の「後藤新平の構想」には

 植民政策学は当時の日本の周辺地域関与を占う最先端の学問であり、そのネットワークは第II編で本格的登場する曾禰や伊藤にも及んでいたのである。彼らがある種のチームとして、舞台を台湾から日露戦後の韓国に移して展開したものこそ、第II編で扱う韓国保護下の条約改正と法典編纂なのである。(119ページ)

とある。

そうであれば後藤の植民政策に関する論文は読まれているであろうと、『日本植民政策一斑』とか『日本膨張論」は読んでいるはず、と参考文献を探したがない。新渡戸の植民政策論もない。矢内原が植民政策学者として何度か登場するが、矢内原の植民政策学に関する議論もなく、(これも見過ごしているだけかもしれないが)この論文の重要なテーマである「植民」とは何かが抜けている印象を受けた。もしかしたら植民が悪いことで、自決権がいいことだと思い込んでいるのでは?と思ったりした。

時々出てくる「偽善」の植民や、帝国主義に関する定義はどこかで議論されているのであろうか?浅野先生は法律の専門ではなく国際政治だったと思う。

とにかく5センチの本を熟読する事はできずに、摘み読みの印象だけの読書メモです。