アンフェアトレード
今月、マーシャル諸島と日本の漁業交渉が決裂し、ニュースになった。
マーシャル諸島EEZで捕獲できるマグロの末端価格は年間約100億円。マーシャル諸島政府に入る漁業権は2億円。
額が大きいと実感が湧かない。桁を落とそう。2円で売った自分たちの資源マグロ。回転寿しで100円で売られている、ということだ。これをどう思うか?
石油や鉱物等の原産国が取得する利益は30-50%。マグロ市場は正常なのか?
<フェアトレード>
一時期、「フェアトレード」がはやった。中間搾取をなるべくなくして、途上国等原産国の生産者に「フェア」な値段で収入が得られる様にする仕組みである。
これが市場経済に反するか。少なくとも道徳学者であったアダム・スミスが聞けば評価するであろう。見えざる手のジュピターも微笑むであろう。
マグロ市場は「アンフェアトレード」と言わざるを得ない。
<なぜ2%で手を打つのか>
それではなぜ今までマーシャル諸島政府は2%で手を打ったのか?
島嶼国の行政スタッフは数が少ない。大臣と事務次官だけという状況だ。彼らが日本に呼ばれ、銀座で接待漬けになる。袖の下を貰うこともある。(官房機密費か?)さらに病院建設等の大きな援助案件をちらつかせる。マーシャル諸島国内でこれがアンフェアである、という世論はほとんどない。担当者は2%で手を打つ。
以上、島嶼国の漁業専門家から聞いた話である。
<タックスペイヤーがマグロを食べる>
海洋政策財団が開催したセミナーで水産庁の宮原氏が指摘していたことが忘れられない。
「マグロの値段を押さえようとする背後には一皿100円の安いマグロを買い求める消費者がいるのです。」
必用な量だけ穫って適正価格で消費しよう、という消費者のフェアトレード意識が重要だ。
また自分たちの税金でマーシャル諸島に病院が建設されて、感謝されているだろう、と単純に考えてはいけない。それはあなた(私も)が100円でマグロ一貫を食べる事への見返りである。
そしてこのことは負の連鎖、即ち、援助による信頼も構築されず、漁業資源の枯渇を導き、さらにマーシャル諸島の人々のGDPも一向に増えない、という話なのだ。
(文責:早川理恵子)
参考
JAPAN REJECTS MARSHALLS BID FOR FISHERIES REVENUES
Negotiations for new agreement break down
By Giff Johnson
MAJURO, Marshall Islands (Marianas Variety, Sept. 6, 2010) - Negotiations between Japan and the Marshall Islands for a new fisheries access agreement have broken down and are not expected to resume until after the New Year.