やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

恥かいて学ぶカヌーの早さかな

恥をかいて学ぶカヌーの速さ

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親分「今度教科書を出すんだってね。ミネルヴァ書房と言えば学術書が中心のしっかりした出版社だよ。ところでどんな事を書いたの?」

私「はい、太平洋の人々が数千年前にはすでに数千キロを航海し、西はマダガスカルから東はイースター島までの地球の半分の距離をカバーする地域に広がって行った話から始めます。」

親分「何ヶ月も航海したらビタミン不足になるよ。壊血病を解決したのはクック船長だったはず。数千年前はどうしたの?」

私「??そうですよね〜。すいません。わかりません、愚夫に聞いておきます。(冷や汗)」

親分「父ちゃん元気?」

私「今、娘の子守りをしてまして〜。。」

 

親分に今度出る本のご報告をしたところ、知ったかぶりがすぐにばれてしまった。こんないい加減な知識で大学生用の教科書なんか書いて大丈夫だろうか、と思われたに違いない。

早速家に帰って愚夫に聞いたらわからない、というからインターネットで自力調べた。

数千年前の遠洋航海のダブルカヌーは22ノットくらい出していたらしく、日に150−250キロ移動できた。太平洋はまさに海のハイウェイだったんだ。

最近の復元実験では仏領ポリネシアのマルケサスからハワイまでの約4千キロを19日で航海。19日だったらビタミンたっぷりのココナッツやバナナも持つだろう。

ブーゲンビルやクック船長が、彼らの船より何倍も速く走行するポリネシアのカヌーの様子を見た記録も残されており、確実だ。

愚夫によればちょうどこの3月21日に、マダガスカルがオーストロネシア語族、即ちインドネシア辺りから8千キロの海洋を直行してやってきたという説がDNAの研究でも証明されたそうである。

Murray P. Cox, Michael G. Nelson, Meryanne K. Tumonggor, François-X. Ricaut and Herawati Sudoyo, "A small cohort of Island Southeast Asian women founded Madagascar"

Proc. R. Soc. B published online 21 March 2012

 

単純に計算すれば8千キロは40日程度で航海できる。

家の果物皿に時々真っ黒になったバナナがあるが、中身はしっかりしている。40日位だったらビタミン補給は可能なのでは?

正確にはインドネシアからマダガスカルまでの陸地にオーストロネシア語族の言語学的、考古学的証拠がまだ見つかっていないため、未だ8千キロ直行説が有力なようだ。

機械も燃料も、コンパスも海図もない頃に、星と風と潮の流れだけで何千キロも航海していた人類の歴史があったのだ。

 恥かいて 学ぶカヌーの 早さかな