やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

笹川太平洋島嶼国基金とキリバスを繋いだ栗林徳五郎氏

私が笹川平和財団に入った1991年4月の時点で前任者が立ち上げた事業がいくつかあり、その2つがキリバスの事業であった。

一つは合気道支援。一つは留学生への奨学金支給だ。

前任者は私が来る1週間前に辞めていて事業の経緯を聞く事はできなかった。

あまりここに書いてはいけないのかもしれないが、基金事務局はかなり混沌とした状況だった。

当時の理事長から「ギルティーを感じている。申し訳ない。」と言われたのを覚えている。

なので、なぜキリバスなのかは誰も教えてくれなかったが、笹川陽平運営委員長から「栗林さんに頼まれたんだよ。」と後になって伺った。

南洋貿易の栗林徳五郎氏の事である。当時キリバスの名誉総領事であった。

勿論、栗林氏の依頼を受け、財団は内部審査、運営委員会の審査、そして理事会、評議会の審査を受けて事業を決定したはずである。

合気道の方は、漁業と関係がある。

キリバスにはMarine Training Centre (MTC)というのがあって、卒業生は日本の漁船にも乗る機会があった。そこで、日本のOFCFが日本語の教師峰岸睦子さんを派遣した。峰岸さんは合気道の有段者である。栗林領事の支援を受け、キリバス合気道道場を設立し子供、青年達にボランティアで合気道を指導していた。

そこに、東京の本部道場から師範を短期指導のため送る、というのが財団が支援した事であった。

それから、この合気道道場の生徒でもあったテアタ•テルベア氏を日本の電気通信大学に留学させるべく、奨学金を支給する、という事業だ。その後テルベア氏は亜細亜大学に移り、7、8年の日本滞在を経て、目出たく卒業。2008年当方がキリバスを訪ねた時は、政府の要職にあった。

キリバスは笹川太平洋島嶼基金にとって、また私にとっても特別なのである。

アノテ•トン大統領が25年を経て、笹川陽平会長に面談を求められ、4月に来訪された。

来週には笹川平和財団主催の「島と海ネット総会」に参加して下さる事になった。

実は私は知らなかったのだが栗林徳五郎名誉総領事は2013年他界されていた。テルベア氏の件で、合気道の件で何度かお会いしている。

なんとなく、天国から見られているような気がしている。