安保法案が議論される中、当然渡辺昭夫東大名誉教授が実質執筆された、戦後初の日本の安全保障政策「樋口レポート」は取り上げられているものだと思った。
ところが保守を代表する論壇の編集長はその存在すら知らなかった。
安倍政権に近いのであろう細谷雄一氏は「樋口レポート」の「ひ」の字も触れていない。
日本ではなぜ安全保障政策論議が不在なのか 2015年07月31日
http://www.newsweekjapan.jp/hosoya/2015/07/post.php
<「樋口レポート」のレベンジは私がやる宣言>
渡辺先生はわが恩師(2つ目の修士)であり、笹川太平洋島嶼国基金二代目運営委員長に私がお招きした。財団内の不正から事業を、基金を守るためである。
よって現在私が進めているミクロネシアの海洋安全保障事業は、当然この「樋口レポート」をフォローしている。
私は、この事業が始まって数年後に、渡辺先生に「「樋口レポート」のレベンジは私がやります!」と宣言した。
なぜリベンジか?
この「樋口レポート」日米同盟を2番目にもって来たがために、ジョセフ・ナイに潰された、というか外圧に利用されたのである。
しかし、今読み返してみても現状の日本の安全保障問題が的確に分析され、有効な示唆が書かれていると思う。特に中国の下記の記述だ。
「中国は、最近の歴史に例を見ないほど安定した国際環境に恵まれて、近代化に最大のエネルギーを注いでいるが、台湾海峡をはさむ諸問題や、香港の地位、内陸部と沿岸部との経済格差拡大など、未解決の問題を残している。(中略)中国大陸の沿岸に散在する島嶼の領有権をめぐる利害関係国の間の紛争が、軍事衝突に発展する危険もまた軽視はできない。これらはすべて、政治的・軍事的に十分に安定した状況が、まだ、この地域には存在しないことを物語っている。」
<「樋口レポート」を読もう。議論しよう。>
そこで提案したい。「樋口レポート」を再び読もう、議論しよう。そして実行しよう。
渡辺先生の安全保障政策は多角的なのである。軍事力だけではないのだ。
この重要なレポートはこれを主導した防衛省のウェッブにもない。
掲載しているのは下記の「東京大学東洋文化研究所 田中明彦研究室 日本政治・国際関係データベース」だけだ。
[文書名] 防衛問題懇談会「日本の安全保障と防衛力のあり方‐21世紀へ向けての展望‐」(樋口レポート)
The Modality of the Security and Defense Capability of Japan, The Outlook for the 21st Century
Advisory Group on Defense Issues
[年月日] 1994年8月12日
[出典] 内閣官房内閣安全保障室
(和文)http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/JPSC/19940812.O1J.html
(英文)http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/JPSC/19940812.O1E.html