以前から気になっていた伊藤隆著『歴史と私』を読んだ。
「今でも、あれは夢じゃないかと思います。」
で始まり、
「そして、やはり思うのです。あれは夢はないか、と。」
で終わる「まえがき」を読んで一気にこの本に引き込まれてしまった。
今上天皇は伊藤氏を呼ばれて、予定の1時間を超え近現代史のお話を聞かれたのである。
天皇がどのように情報を得るのか以前から気になっていた。このように自分の意思で専門家を呼んで話を聞く機会がある事を知って、安心した。
伊藤隆氏は笹川良一研究もしているし、当方の恩師渡辺昭夫教授のお知り合いのようだし、しかもまだ読んでいないが近衛文麿研究もされていて気になっていた。
同書には渡辺先生が「渡辺昭夫君」としてよく登場する。渡辺先生は国際政治、安全保障のご専門家だが豪州に行く前は明治時代、天皇親政運動の研究をされていた(15頁)というのは驚いた。
それから笹川批判の先鋒松本重治と軍部、共産主義との深い関係が触れられていて、調べたら面白いだろうな、と思った。(76頁、?)松本重治はラティモアと近衞を結びつけた人物でもある。
『中国と私』ラティモア(1992年 みすず書房) - やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa
インタビュー手法についても共感。(264-265頁)
現場業務の一つがヒアリング、インタビューである。26年間やっているがあまり準備しすぎるのは良くないのは当方も経験上わかった。せいぜい質問は3点にしぼり、オープンエンド、ストーリーテリング、の手法で話を引き出すのがいいのだ。
笹川良一研究の経緯も書いてある。(266-268頁)亡くなられた佐藤誠三郎氏の仕事を引き継がれたのだ。
ちなみに渡辺昭夫先生を笹川太平洋島嶼国基金の運営委員に引き連れて来たのは当方だ。世間の批判が強まり笹川陽平運営委員長の退任に伴って、運営委員候補リストを作れとの指示があり、恩師であり太平洋島嶼国島嶼研究では国内で唯一人まともな議論をしている(これはK教授の談でもあります)渡辺先生の名前を上げさせていただいた。ちなみに同時に産経の千野さん、『フラジャイル』を書かれた松岡正剛さんのお名前もあげた。千野さんも運営委員になられた。
伊藤隆先生の『近衛新体制、大政翼賛会への道』も読んでみたい。
歴史研究はイデオロギーの世界で、伊藤隆氏が歩んで来た歴史研究は共産主義との戦いでもあったようだ。