やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

BBNJとは何か?太平洋島嶼国の議論(2)

BBNJのアドホックオープンエンド非公式ワーキンググループが設置されたのが2004年。

2012年のリオ20で、2015年までに実施協定を策定するかどうかを決める事が、合意された。

太平洋島嶼国のThe Marine Sector Working Group - MSWGが作成したこのテクニカルレポートはまさに2015年の決議へ向けた指南書である。

2014年4月と6月に実施された2回のBBNJワーキンググループ会合について書かれてる。

実施協定、Implementing Agreement IA が重要。

これを支持しているのがG77と中国、そしてEU

G77にはパラオとツバル以外の太平洋島嶼国が入っている。

IAに反対、躊躇しているのが米国。理由はABNJにおける遺伝資源は公海の自由の範囲である。米国は既存の地域機関の対応で十分ではないかとロシア、カナダと共に主張。日本、アイスランド、ロシア、韓国は法的ギャップ(legal gapとは何か?)が明確にされていない事と、環境評価、漁業は除外する事を主張。

これらの反対意見にも拘らず、2014年6月の会議では、2011年にBBNJワーキンググループで合意された4つのパッケージディール ー これは以前まとめた下記の4点 ー について2015年の期限と共に引き続き協議を継続する事が合意された。

(1) 海洋遺伝資源、(2) 区域型管理ツール、(3) 環境影響評価、(4) 能力開発及び海洋技術移転

殆どの国が新たに策定される実施協定は、既存の地域機関とぶつからないしと主張。G77, EU, 中国そしてニュージーランドは実施協定は調整と協力を機能させる役割があると前向きだ。

逆にロシアと米国は既存の組織とぶつかるものとして実施協定は受け入れられない、明確に反対している。

漁業資源がBBNJ実施協定に入るか入らないかの議論も2つに別れている。これは既存の地域漁業資源管理機関RFMOと国連漁業協定The United Nations Fish Stocks Agreement (UNFSA)との関連で議論されている。

さらにBBNJの最終組織の在り方をどうするのか?という事も協議された。

既存の政府間機関に替るものではないし、BBNJ ABNJがカバーする内容を扱う政府間機関の業務を保留させるものでもない、という事も合意。

2015年6月の国連決議までに随分熱い議論が、途上国+EU+中国 vs 米国+日本+ロシアetc の間にあったのである。後者の先進国が押し切られたのは途上国の数の力、だろうか?

このテクニカルレポートの概要まだ続きます。