やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

温暖化交渉と海洋問題

京都議定書が外交上の大失策であったことは、政府関係者の間では共通認識である。だがその原因を一つに絞ることはできない。日本人の大半が京都という美名に酔いしれ、議定書は国際政治上の道具でしかないという当たり前の事実が、目に入らなかったのだ。」

気候変動の事は殆ど追っていないが、トランプ政権が関連の予算をカットしていること、島嶼国にとっては死活問題である事等からどうなるのか気になっていたところに、東京大学客員教授米本昌平氏が産経のウェッブに下記の記事を掲載していた。

トランプ大統領の一撃で温暖化交渉の理想主義は剥落した 京都議定書は日本外交の稀にみる大失敗であった」 東京大学客員教授米本昌平

http://www.sankei.com/column/news/170323/clm1703230007-n1.html

1992年のリオの背景にドイツ統一に対する近隣諸国の懸念があったこと。日本だけが排出枠を途上国から5千億円位買い取ったこと。始めて知る事ばかりであった。

そして米本氏は特徴として下記の3点を上げている。

第1に「予防原則」に立っていること。

第2に、京都議定書は事実上の産業活動であるCO2の排出削減を国際法によって義務づける、異端の国際合意であったこと。

第3に、外交の形態に革命が起こり、交渉過程が全てオープンになって、議論全体が環境NGO寄りの価値観の上に組み立てられていること、である。

来週から開催されるBBNJの第3回準備会合はどのような結果になるのであろうか?

もし現在の国際政治が反映するとすればどの部分か?上記の3点目は避けられないであろう。

FBFの方が同じく1992年のリオの結果として熱帯林に関しても同様なコメントがマレーシア政府から出されている事を紹介されていた。

「地球規模での環境悪化と環境保護の認識の高まりに追従して、熱帯林諸国は過激な NGOs と環境運動の攻撃の的になってきた。しかし無秩序な林木伐採、過度な開発、生物多様性の喪失そして森の民の虐待、と彼らは言い張るが、彼らの説は事実と状況の誤報、誤解から生じたもの、ということが稀ではない。」

「国際化時代の森林資源問題」(有木 純善著)の中で紹介されているらしい。

まさに伝統的知識と公海やEEZの海底資源開発を繋げて議論している様子と変わらないのではないか?昨日紹介したPacific Youth Councilに、なぜ海底鉱山試験採掘が犯罪なの?と聞いたところ、結果もわからない実験は核実験と同じであり、他の地域が許可しても太平洋地域では許可しない、という回答であった。

トランプ政権の新たな海洋政策がここ数ヶ月の間に開催される国連の海洋関連の会議にも影響を与えるのではないだろうか?