下記の列島線戦略に関する論文を読むと、日本統治時代の南洋諸島が米国にとっての「列島線」だったようだ。それ以前にもドイツのカール・ハウスホーファーなどの地政学者がいたようだが、実質的な列島線が示されたのはこの東西に延びるミクロネシアの日本領だった。しかし日本側がそのような事を考えを示していた記述はまだ知らない。
”WHY ISLANDS STILL MATTER IN ASIA - CWP ALUMNI ERICKSON & WUTHNOW”
Friday, Feb 5, 2016 by dsuchen
https://cwp.princeton.edu/news/why-islands-still-matter-asia-cwp-alumni-erickson-wuthnow
この記事の中に、日本の南洋統治のスパイ活動をした米国のエリス中佐の事が出て来て、彼が書いた報告書がリンクされている。海兵隊が1992年に、1921年に出されたレポートを復刻している。ウェッブで読める。
U. S. MARINE CORPS 712H Operation Plan ADVANCED BASE OPERATIONS IN MICRONESIA 1921
http://www.theblackvault.com/documents/wwii/marine1/1246.pdf
この1992年の復刻版に書かれた序章の「免責条項」が興味深い。本体はまだ読んでいない。
そこにはエリス中佐がアルコール中毒だっただけでなく、その頃米国一般に人種差別が激しかったように、彼も人種差別者だった、と明記してあるのだ。そしてその人種差別が外交関係に緊張を生み出し、戦争を引き起こした。戦力で日本人を馬鹿にしていた事から戦争の初頭の犠牲者が多かった、と書いてあるのだ。
"These racist views had tragic consequences. They helped precipitate the diplomatic climate which contributed to the outbreak of war in the Pacific." (page i-ii, U.S. Marine Corps, Advanced Base Operations in Micronesia, FMFRP 12-46, 1992)
なんだ。米国は、少なくとも海兵隊はわかっているのではないか。あの戦争の原因を。新渡戸が命を削ってまで米国に行って解決しようとした日米関係の問題を。
エリス中佐だけでなく、アメリカ全体が人種差別で妄想状況だった事は下記に平間洋一先生の下記の記述に詳しく書いてある。
「エリス中佐変死事件ー英雄は創られる」
http://hiramayoihi.com/Yh_ronbun_dainiji_ellis_1.htm
列島線戦略はアル中と妄想のアメリカ人が生んだ幻想が、冷戦期にはマッカーサーやダレスによって対社会主義国家(中国、ソ連)に応用され、皮肉にも今中国がなぞっている。
そんな風に思えてきた。
<関連資料>
ハウスホーファーの資料は下記を読んだ。インド・太平洋圏の論文が多いのだそうだがその点はまだあまり研究されていない、ということらしい。日本に2年滞在している。泉涌寺近く法音院のそばで暮らしていた様子。後藤や新渡戸との交流も合った様子。
カール・ハウスホ-ファーと日本の地政学
一第一次世界大戦後の日独関係の中でハウスホレフア-のもつ意義について-
クリスティアン・W・シュパンダ★
http://www.lit.osaka-cu.ac.jp/geo/pdf/space06/01spang.pdf
偶然見つけた下記のウェッブも興味深い。そういえばカール・シュミットも読まなきゃ。
ドイツ地政学者の証言:その3