カール・シュミットの『陸と海と 世界史的一考察』を読んで興味を持った法学研究者であればこの本が出版された8年後の1950年に出された『大地のノモス』を読みたくなるのは当たり前なのではないか?
しかし、『陸と海と』が10歳の一人娘アニマに向けて書かれた、比較的薄く、分かりやすい(しかし内容は濃い)のに対して『大地のノモス』はその「はじめに」でシュミットが「この書物は、苦難に満ちた諸経験からすべてを曝け出した所産であり、私は、それを、40年以上も仕えてきた法学の祭壇に供える」(p. 4) と書いているように法学者が読むレベルの高い、また分厚い本である。
この「はじめに」を読んだだけで、私には太刀打ちできない、降参、と白状するしかない。
「海洋取得の概念は、法律家によって造られたものであって、地政学者によるものではない。」(p.5)にも拘らず、法学は「地理学的・自然科学的な考察」と「根源的・神話学的な考察」に引きずり込まれ、「イデオロギー的闘争の野蛮さ」と「言語のバビロン的混乱」という現代(即ち1950年以前)の状況の中でヨーロッパ的国際法秩序は崩壊している、と嘆く。
この状況を変えるには即ち「…未知の天体を発見し…人間が自由に分捕り、自己の地上の闘いを軽減するために利用しうる(というような)空想によって」また「より広範な自然科学的な工夫によって」も解決されず、自己の地上的現存の根源的な秩序形成が至上命題であると説く。(p. 5-6)
1985年まで生きたシュミットは1960年代から開始した植民地の独立と新たな海洋法形成の動きを知っていたはずであるが、シュミットはどのように見ていたのであろうか?
本書は、次の4部から構成される。
第1部 序論としての五つの系論、
第2部 新世界の陸地取得、
第3部 ヨーロッパ公法、
第4部 大地の新しいノモスの問題、
時間的な制限と、そして何より自分の能力の限界から第3部、第3章にある海洋の自由、そして第4部の第1、2、3章
ヨーロッパ全体による最後の陸地取得(1885年のコンゴ会議)
ヨーロッパ公法の解体(1890年ー1918年)
国際連盟、および大地のラウム秩序の問題
をだけ読んでみた。第4部に関心を持ったのは、国際連盟を実質的に立ち上げ、形成したのが日本、新渡戸稲造であるから、だ。
『陸と海と 世界史的一考察』は4回位読んでやっとわかった、という感想があるが、『大地のノモス』はまず基本的な歴史的背景を知らずに理解することは到底無理である。例えば1713年のユトレヒト条約、そしてスイスの中立の問題。
一読しただけである。面白い、という感想しか今はかけない。棒線を引いた箇所を自分のメモとしてブログに書いて置きたい。