佐藤健志さんの新訳『フランス革命の省察』保守主義の父かく語りき。(PHP研究所、2011年) ローレンツ・フォン・シュタイン著『平等原理と社会主義』を読んで、昨年入手していたことを思い出した。
まずは佐藤健志さんの超読みやすい和訳に感謝したい。
シュタイン著『平等原理と社会主義』も佐藤さんが訳してくれないであろうか?
エドマンド・バークのこの本は以前から気になっていたが英語で読むのも面倒、と思って本棚のどこかにある。シュタイン博士同様、フランス革命批判である。
2箇所書き留めておきたい。
まずは、シュタイン博士もフルボッコしていてたルソーのことが、ヒュームの証言を引用して書かれている。
「ヒューム氏によれば、ルソーは物を書く上で、こんなポリシーを持っていた。一般大衆を驚かせ、注目を浴びるためには、非日常的な夢を売り物にしなければならない。しかしエキゾチックな神話などは時代遅れとなって久しく、巨人、魔法使い、妖精、伝説の英雄といった類にしても、とうにリアリアリティを失っている。」
ルソーは確信犯だったのである。
そしてバークは次にように続ける。
「かりにルソーがいまも生きていたら、自分の弟子に当たる連中が夢と現実をごっちゃにしたあげく、世の中を引っかきまわしていることにショックを受けるに違いない。」
ルソーら(何者か知ってしまうと思想家と呼べいない。扇動家?)にアイデアを提供した中に『ブーガンヴィル航海記補遺』がある。この本は読んでいないが、タヒチの人々が書かれているという。そしてその本から「高貴な野蛮人」というイメージが得られたが、太平洋島嶼の人々が平和に自由に暮らしているなんて、書いた本人であるブーガンヴィルでさえ信じていなかかったのだ。
もう一箇所、印象に残った箇所。
フランス革命の背後に金融勢力と知識人の結託があった、というのだ。
この知識人とは学問的な知識ではなくルソーレベルの知識の、すなわち今でいうフェイクニュース、イエロージャーナリズム的な扇動的情報操作を得意とする人々であろう。
「金融勢力」とは成金のことらしい。
しかし彼らは金はあっても社会的地位や土地がなかった。それで革命で教会の土地を略奪したのである。そして行われたのが土地転がし。
バークは土地を持っているがお金のない貴族と、お金はあるが土地がない金融勢力の抗争は見過ごされるかもしれないが、実際は激烈に展開している、と指摘している。そして後者が、知識人と結託し、金の力を利用できる社会の変革を望んでいた、というのだ。
ソ連の共産主義者がすごい財産を持っていたことを、友人から聞いたことがある。
シュタイン博士とバークのフランス革命批判。両方ともしっかり読んではいないのだが、海洋権益の分配や平等原理、共通財産、と言った一見美しく聞こえる、しかしあやふやな概念を検討するとき参考になりそうだ。