やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

ミクロネシアでの海底地形調査と海洋における国際協力の今後

同志社大学坂元教授が編集されている笹川平和財団の【Ocean Newsletter】に、BBNJの議論にも、また来年の島サミットにも重要な記事が掲載されていた。

【Ocean Newsletter】第409号(2017.08.20 発行)

ミクロネシアでの海底地形調査と海洋における国際協力の今後」

(国研)海洋研究開発機構経営企画部国際協力推進担当役◆川村善久

https://www.spf.org/opri-j/projects/information/newsletter/latest/index.html

BBNJの議論を見ると、太平洋島嶼国側も何をどう支援して欲しいのかわからず、取りあえず利益を要求することしかしていないのである。(伝統知識、平等原理、隣接性にこじつけて)

この川村善久氏の記事には(国研)海洋研究開発機構の研究船「かいれい」によるミクロネシア連邦海域での具体的な支援が書かれている。

中でも興味深く、また重要と思われるのは下記のように豪州からの提案でこの支援が行われた、という事である。豪州は赤道以南だけでなく以北も自分の裏庭と思っているところがあるが、他方で支援が十分にされていない事は、戦後この地域を実質的に担当してきた豪州が一番知っている事である。

「豪州地球科学研究所の西太平洋・島嶼国海域担当の職員から「ミクロネシア連邦が緊急に海底地形調査を必要としており、ロードハウライズ周辺での構造探査航海へ向かう研究船「かいれい」を利用し調査を実施できないか」との問い合わせがあった。」

さらに興味深いのは、水産庁の取締船同様、シップライダーズ方式である事だ。

「(ミクロネシア連邦が)研究船を独自でチャーターして調査を実施するほどの財源も持ち合わせていないこと等の情報を得た。豪州地球科学研究所からの強い支援要請もあり協議の結果、ロードハイライズ調査航海の回航時に必要最小限の4日の調査日数を追加し、その調査日数のみミクロネシア連邦予算で実施することで、3カ月弱という短い調整期間で本調査航海を確定、実施することができた。」

島嶼国は自ら海洋研究調査の物理的資材を持つことは難しい。日本の調査船に乗船してもらうシップライダーズ方式はベストソルーションである。さらに川村氏が提案しているように、この国際協力が日本の海洋におけるプレゼンスをより高める、まさにウィンウィンの事業になる事だ。