やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

仏領ポリネシアのハオ環礁を巡る「虹の戦士号事件」「国家責任」「1500億円の養殖場」

 まさか、まさか、仏領ポリネシアのハオ環礁の事が2日続けて当方の指導教官の坂元教授、そして水産庁のドン宮原さんから伺うとは思わなかった。誰も知らないし、話しても誰も関心を持たないであろう、と思っていた環礁である。

坂元教授のunder graduateの授業で「国家責任」について取り上げられた。そして「虹の戦士号事件」とこのハオ環礁の事が紹介された。

「国家責任」を論じる重要なケーススタディなのだそうである。詳細は先生の書かれた『条約法の理論と実際』(東信堂、2004)にあるとのこと。早速拝読した。

まさか、あの「虹の戦士号事件」を坂元先生が論じられているとは!

この話を知ると、国際法って、国際社会ってなんと無慈悲で、そしてフランスの横暴さに呆れるばかりである。この話を知ると、フランスは太平洋から出て行け!と思ってしまうし、仏領ポリネシア独立を応援したくなるのだ。

 

複雑な話を掻い摘んで書くと、、

ムルロア核実験を反対するグリーンピースの船「虹の戦士号」がフランス政府が手配した2人の男女によってオークランドで爆破された。運悪くカメラマンが船に乗船しており亡くなった。フランス政府はこの2人は仏領ポリネシアのハオ環礁に3年拘留する事をニュージーランド政府に約束したが、それぞれ病気や妊娠を理由に期間を待たず帰国させていた。この件に不服を申し立てたニュージーランドの請求を仲裁裁判所は国家責任を根拠に棄却したのである!

 

ここはもっと複雑だ。坂元教授の御著書には下記のように説明されている。

「その結果、何が生じているかといえば、同一の事情であるが、それを根拠として条約の終了や運用停止を条約法の平面で正当化しようとすれば、要件が厳しくてその正当化が困難であるにもかかわらず、国家責任法の平面に正当化機能を移せば、その要件をクリアできうるという状況が第一の事例(虹の戦士号事件の事)で生じている。」(387ページ) 

この舞台となった仏領ハオ環礁は、ムルロア核実験のための基地として開発され大型飛行機のための広大な滑走路が建設されている。今度はここに中国が1500億円を投資し、水産養殖場(確か鰡)を建設し始めたのである。

なんでこんなところに?そう、仏領ポリネシアこそ、中国と南米を結ぶ中間点に位置し、地政学上戦略的場所でもあるのだ。

宮原さんは、中国の漁業関係者からその話を聞いて来たばかりで「ハオ環礁って知っている?」と私に聞いて来たのである。そりゃあ知ってるも何も!

フランスは太平洋にある広大な領土をそしてEEZを持て余しているのだと思う。放っておけば南シナ海のようになる事は想像に難くない。

 

<ハオ環礁について書いたブログです。>

時既に遅し?仏領ポリネシアは中国の手に!

https://yashinominews.hatenablog.com/entry/2017/05/02/083022

 

Hao環礁と中国の1500億円の水産養殖場事業

https://yashinominews.hatenablog.com/entry/2017/05/14/172109

 

仏領ポリネシアのハオ環礁に中国水産養殖場が!

https://yashinominews.hatenablog.com/entry/2017/08/14/063314