やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

『国際海峡』坂元茂樹編著2015年東信堂(自分用メモ)

これも自分用のメモ。

第1章日本と国際海峡 坂元茂樹

・領海12海里拡大に伴い世界の116の国際海峡が海洋沿岸国の領海になることに。3ページ

・航行の自由を求める「米国・領海提案」「ソ連・海峡提案」に対し海峡の自由通航を阻止しようとする「海峡8カ国提案」

・この対立打開のために英国が「英国・領海・海峡提案」を提出。この英国提案が海洋法条約に導入される。

ここで、坂元教授が引用している「注解国連海洋法条約 上巻」(小田滋著)を確認。137−138ページ

英国の提案が海洋法の海峡問題に一番影響を与えた詳細があるのだが、英国とフィジーが共同議長となった「私的海峡グループ」の役割に触れている。フィジーの独立は1970年だが、この海洋法条約の議論では、海峡問題に限らず活発な提案国となっていることに注目したい。

・日本には厳密な意味での国際海峡は存在しない、なぜなら国内措置の領海の制定(1977年)で24海里未満の国際海峡において領海3海里を採用し、公海部分を残しているから。7ページ

・しかしこの措置は非核三原則の議論や、外国船舶が日本の海峡において通過通航権ではなく、無害通航権しか持たない、と言う問題を残す。9ページ

国際海峡制度は、通航の自由を主張する海峡利用国と規制制限を行使したい海峡沿岸国の間の、政治的・軍事的・経済的な様々な利害の調整の中で存在する。。。 12ページ。

・特定海域の領海を3海里にとどめることで、逆に潜水艦の潜水航行を防止しうる、すなわち安全保障上重要。中国軍が第一列島線を突破する海峡は大隅海峡奄美大島ー宝島、沖縄本島宮古島、与那国ー台湾、台湾海峡の5つしかない。19ページ

国際海峡は「通過通航権」が適用され潜水艦の潜水航行を防げない。つまり安全保障上問題。20ページ

国際海峡の問題は自分の博士論文に直接関係ないが、議論の仕方、複雑さは勉強になる。多分メディアは海峡の議論を理解できていないからニュースにすぐ飛びつくのは気をつけよう。

ホルムズ海峡の話も安倍政権の、今の話題として複雑な議論が書かれている。

坂元先生の論文のまとめは、日本は今まで他国の国際海峡を通ることばかり議論してきたが、中国の海洋進出に伴い自国の海峡を「通られる」と言うことにもっと注意を、と言うことが書かれている。(私の理解が間違っているかもしれません)

海洋法は国際情勢を反映し、常に発展、変容する生き物なのだ。