やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

イワシクジラを巡るイエロージャーナリズム(2)追記あり

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今回ワシントン条約会議(日本以外ではCITES (Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora) の方が一般的のようだけど)でのイワシクジラの件を検索していて参考にしたのが野生生物保全論研究会Japan Wildlife Conservation Society (JWCS).

事務局があげているブログを見ると鯨肉が食用になっている事を指摘する15のNGO団体の一つとなっている。

 

2017年11月28日 (火)

第69回常設委員会 1日目 調査捕鯨が議題に

http://jwcs.cocolog-nifty.com/blog/2017/11/691-3f20.html

 

「NGOグループ(JWCSを含む15団体、Animal Welfare Institute, Born Free Foundation, Born Free USA, The Center for Biological Diversity, Environmental Investigation Agency, Humane Society International , International Fund for Animal Welfare. Natural Resources Defense Council, ProWildlife, SSN, Whale and Dolphin Conservation, Wildlife Impact, Wildlife Conservation Society, WWF)からは、水産庁が鯨肉を健康に良いと広告したり、イスラム教の戒律に沿った食品であることを証明する「ハラール認証」を取得したりしている例を挙げて、鯨肉が商用になってることを指摘しました。」

 

ワシントン条約3条5項cを読む限り、「鯨肉が商用になる」事を否定していないと読めるがこれら15のNGOはどのような理屈で指摘しているのか?問題は標本が科学が主か、商用が主かであって、科学性が主でない事の議論をNGOはすべきなのではないだろうか?

 

そこでこの野生生物保全論研究会Japan Wildlife Conservation Society (JWCS)の役員を見て見ると以下の通りで、国際法学者はいない!

 

小原秀雄(女子栄養大学名誉教授/人間学・動物学)

安藤元一(ヤマザキ学園大学教授/野生動物学)

小川潔(東京学芸大学名誉教授/環境科学分野)

森川純(酪農学園大学名誉教授/地域国際関係論)

鈴木希理恵(事務局長・東京農業大学非常勤講師/環境・農業)

永石文明(東京農工大学農学部非常勤講師・立教大学兼任講師)

並木美砂子(帝京科学大学生命環境学部教授/動物園動物学)

古沢広祐(國學院大學経済学部教授/環境社会経済学 食・農・環境)

磯田厚子(女子栄養大学教授/国際協力論)

岩田好宏(元 中学・高校教諭/科学教育・環境教育)

山極寿一(京都大学総長/人間学・霊長類学)

 

そしてこの団体が出している要望書のリストがすごい。内容もすごい。科学や法律とはほぼ無関係な政治団体であることは一目瞭然だ。

下記のあるリストからいくつか読んだが、この組織のイデオロギーは慎重に検討した方がよいであろう。戦争が環境破壊になるのであれば、なぜ南シナ海の島埋め立てを抗議しないのであろうか?

https://www.jwcs.org/work/statements/

 

・安全保障関連法案(安保法案)に反対する環境 NGO 共同声明

・辺野古新基地建設に反対するNGO緊急共同声明

・安倍晋三首相への要請文(日本の象牙取引及び日本によるアフリカの森林破壊/アフリカゾウ殺戮に関して)

 

メディアの皆さんはイエロー記事にして購読数を上げる必要があるかもしれませんが、今回のイワシクジラの件で情報を出している、もしくは日本の調査捕鯨を反対しているNGOがどんな組織が、少なくとも30分の調査ををしたらどうであろう?

それと、是非国際法学者の意見を求めてください。

 

<追記> ワシントン条約、自分の研究の対象外だが勉強になる。今回の議案で取り上げられているのは第1条 定義の「海からの持込み」

(e) 「海からの持込み」とは、いずれの国の管轄の下にない海洋環境において捕獲され又は採取された種の標本をいずれかの国へ輸送することをいう。

 

3条5項(a)の「科学当局」も重要であろう。

(a) 当該持込みがなされる国の科学当局が、標本の持込みが当該標本にかかる種の存続を脅かすこととならないと助言して いること。

 

1条

(f) 「科学当局」とは、第9条の規定により指定される国の科学機関をいう。

 

しかし9条には科学当局の定義はない。

第9条 管理当局及び科学当局

一 この条約の適用上、各締約国は、次の当局を指定する。

(a) 自国のために許可書又は証明書を発給する権限を有する1又は2以上の管理当局

(b) 1又は2以上の科学当局

 

松井 芳郎先生の「国際環境法の基本原則」2010年 を思い出した。まだ読んでいない。

 

 

<追記2>

齋藤農林水産大臣記者会見概要11月29日

 

27日からですね、ジュネーブにおいて開催されている、ワシントン条約の常設委員会におきまして、我が国の北西太平洋鯨類科学調査に関しまして、公海において捕獲したイワシクジラの我が国への輸送、これがワシントン条約で規制されている商業目的のために行われたものに該当するか否かということで議論が行われておりました。その結果、議論は継続するということになりまして、今回の会合においては、ワシントン条約の事務局に対して、我が国に対し追加情報の提供を求めるとともに、我が国に調査団を派遣して情報収集を行うことを検討すること、それから、次回の常設委員会にその結果と、これを踏まえた常設委員会による新たな勧告案を報告することと、これが勧告されることになったと承知をいたしております。我が国としては、引き続きですね、鯨類科学調査は国際捕鯨取締条約に基づく科学的研究のための調査でありまして、商業目的のものではないと。それからイワシクジラの我が国への輸送については、ワシントン条約の規定に基づいて、必要な証明書を適切に発給していると、こういうことをですね、丁寧に説明していきたいと思っています。