ハウスホーファーのインド太平洋構想がゾルゲや尾崎に何某かのアイデアを提供し、彼らの日本での工作活動、すなわち南進論の普及につながっているのではないか?と想像し資料を軽く検索したが見つからなかった。
ところがFBFの方からデジタルライブラリーでも入手できる尾崎の「東亜民族結合と外国勢力」と言う本を紹介いただいた。昭和16年6月、中央公論から発行されている。1941年真珠湾攻撃の半年前だ。またハウスホーファーは1941年5月に教え子のヘスが英国に飛び立ち、ナチスとの関係が悪化した時期でもある。
100ページの短い論文だから挑戦しようと思ったが、今ちょっと忙しく最後の章「五 東亜民族に結合と日本」だけ読んだ。それでも興味深い箇所が何箇所かあった。
96ページ 近衛声明の東亜新秩序の建設、松岡声明の大東亜共栄圏の確立は、日本が歴史的使命を果たすための東亜諸民族結合の方法である。(結合とは?、また歴史的使命って?)
97ページ 東亜民族の民族運動は民族の独立と統一を目指すものであった。(「独立と統一」は矛盾していないか?)そのために第一に各民族国家の政治的軍事的結合、第二に自給自足の経済、第3に文化的結合。(最初に軍事が来るのが疑問だし、文化交流であればわかるが結合って何を意味するのだろう?)
東大を(多分、近衛と木戸幸一に)追われた矢内原忠雄は読んでいたであろうか?同じ植民政策学者の高岡熊雄はどう受け止めていたのであろうか?
少なくとも尾崎、ゾルゲは後藤新平も新渡戸の植民政策も知らないような気がする。
ゾルゲの南進論も読んでみたい。