このブログで情報を発信しているおかげで、色々なところから声をかけていただける。先日は京都大学で研究会に呼ばれて太平洋島嶼国のお話をさせていただいた。1時間の発表の後、2時間近い質問があって、色々と考えさせられた点が多い。
うまくまとめきれず満足できる回答ではなかったし、忘れない内にまとめておきたい。
なぜ、太平洋島嶼国が中国の支援を受けるようになったのか?という質問である。
一つは天安門事件の後の国際社会の中で支持を受ける必要があった事をあげさせていただいた。小国は、言葉は悪いが金でどちらにも靡く。
もう一つが、開発援助サークル、即ち学者や政府関係者が支持していた概念。
次々と独立し政治的自決権を獲得し次は経済的自決権を目指す小国の「真」の独立である。
国家予算に見合った、即ち国家予算でメンテ管理できるインフラや公共財支援である。
そうなると人口数十人、数百人の離島の離島には何もできなくなってしまう。
研究会で事例として紹介したのが、現在トルコ大使をしている宮島昭夫さんの件だ。
2000年の第二回島サミットの時大洋州課長で、小渕総理からの指示で笹川会長のアドバイスを求めに財団に来られ、笹川会長から早川に聞けと言われて色々とアドバイスさせていただいたのである。
2000年はIT支援を盛り込んだ沖縄憲章が採択されたG8サミットが同時期開催され、島サミットでもIT支援が盛り込まれた。*
フォローアップとして日本のODA支援を受けるUSPNet(南太平洋大学)がカバーしないミクロネシア地域の情報通信ネットワークを、パラオのナカムラ大統領やクアルテイ文部大臣(当時)の要請を受け、私が(笹川太平洋島嶼国基金)ハワイ大学と協力して案を作成したのだ。
その案をナカムラ大統領が森総理に渡したが、当時の宮島課長が潰したのである。
理由は小国に数十億円もするインフラは必要ない、という事であった。遠隔教育の必要性を訴えた案件だったが、島に職もなく、人材育成も必要ない、とういう話であった。
宮島さんは他の官僚と違って、きちんとお礼もしてくれるし(フレンチレストランでご馳走していただきました。税金かもしれませんが。)その後のご活躍も目を見張るばかり。批判する意図はないが、私は愕然とした。外務省がIT音痴であることは広く語られていたが、開発音痴、小国音痴でもあったのか? 実はこのショックが1つ目の博論を始める大きなきっかけであった。
ところで、昨年12月に宮島課長が15年前に潰したミクロネシアの通信網インフラが、世銀とアジ銀の支援を受けて開設した。もし世銀、アジ銀が支援していなければ中国が喜んで投資していたであろう。これで太平洋を制覇できるのである。通信こそ安全保障の要だ。
「SEA-US(Southeast Asia-United States、シーユーエス)」で日本のNECが請け負った。
http://jpn.nec.com/press/201705/20170509_02.html
宮島大使を一人責めるつもりはない。学者も同じような事を主張しているのだ。島嶼研究者や専門家を名乗る人たちは、小国の枠ととらわれ、身の丈にあったインフラをと主張してきたのである。
ところが、ここ数年の安倍政権動きや特に河野外相のブログには明確に小国へのインフラ支援の重要性が書かれている。(続く)
* 「太平洋IT推進プロジェクトの実施」: 国連開発計画(UNDP)への我が国の拠出金から100万ドルを使って、情報通信技術(IT)推進のための人材育成、南太平洋大学の遠隔教育システム「USPネット」や国連の「小島嶼国ネットワーク」と連携したホームページの構築、ITを活用した遠隔教育、遠隔医療、マングローブ保全(国際マングローブ生態系協会が関連)等のプロジェクトを、沖縄における知見も踏まえつつ実施する。