やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて30年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

島サミット特集:安倍総理スピーチの分析評価ーバナナ

今回の島サミットでの安倍総理に冒頭発言。国際海洋法、南シナ海、太平洋島嶼国の事を知っていると実に意味深長な内容なのである。

こんな中身の充実した総理スピーチは島サミット史上初めてのことではないか?草稿チームは内閣府、官邸、外務省、あたりだろうか?相当勉強している。今までの島サミットの総理発言を全部揃えて比較できれば面白いと思うが、それは宿題に。

今回の意味深長なスピーチを何度かに分けて分析したい。

最初は、「バナナ」

「皆さま,太平洋といい,インド洋と呼んで区別するならわしは,あくまで人為的,便宜的なものです。二つはもとより,一体です。

 はるかな昔,交易によって「二つの海の交わり」をもたらしたのは,パームの父祖たちでした。

 「huti」というタンザニアの言葉は,ポリネシア語の「punti」が語源だとする説があります。どちらもバナナのことです。

 太平洋からアフリカ東海岸へと,バナナは渡りました。運んだのはパームの父祖たち,人類史に現れた,最も偉大な航海者たちでした。

 私たちが生きる「青の太平洋」は,「青のインド洋」と一体です。機会と可能性は二つの海に共存し,解くべき問いと,つのる危機も,両洋をまたいで不可分なのです。

 この際,二つを巨視的に見る,拡大海洋アイデンティティを,私たち一人ひとり,身につけようではありませんか。

 それは私たちの視野を,地理的に広げます。超長期の時間軸で,広い海洋のシステムを見る視座を与えてくれます。」(英文は文末に)

第8回太平洋・島サミット(PALM8)首脳会合における

安倍晋三日本国内閣総理大臣の冒頭発言

(平成30年5月19日,福島県いわき市

http://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/ocn/page4_004025.html

<分析と評価>

新聞報道によると、中国よりの太平洋島嶼国は、この「インド太平洋戦略」を必ずしも賛成していなかったという。普段は自分たちの歴史だ、伝統だ、と主張する彼らが中国が差し出す目の前の利益に目が眩んで、本当の彼らの歴史「人類史に現れた,最も偉大な航海者」を知らないか、忘れているのだ。まさに安倍総理が太平洋島嶼国首脳に海の歴史を教えた瞬間である。

そして「歴史」を捏造し、南シナ海の権益を主張する中国への痛切な一打だ。

「解くべき問いと,つのる危機も,両洋をまたいで不可分」まさに中国の一帯一路のことだ。

「拡大海洋アイデンティティ」「超長期の時間軸で,広い海洋のシステムを見る視座」これこそ、戦後に作成された国連海洋法条約の精神であろう。即ち「人類の共同財産」「公海の自由」である。

100点満点の演説です。

”My friends, it is nothing more than an artificial, expedient custom to distinguish between one stretch of water we call the Pacific Ocean and another we deem the Indian Ocean. The two are one and the same, as a matter of course.

It was the ancestors of the PALM peoples that in the long-distant past brought about the “confluence of the two seas” through trade.

There is a theory that a word in Tanzania, “huti,” was originated from the Polynesian word “punti,” both of which mean “banana.”

Bananas found their way from the Pacific islands to the eastern coast of Africa. It was the ancestors of the PALM peoples, the greatest ocean navigators the world has ever known, that brought them there.

The “Blue Pacific” where we make our home is one and the same as the “Blue Indian Ocean.” Opportunities and possibilities coexist in these two seas, and the questions to be worked out and the growing crises stretch across both oceans, unable to be separated.

On this occasion, shall we not -- each and every one of us -- take on an expansive oceanic identity by which we view the two oceans holistically?

That will expand our field of vision geographically. It will impart to us a viewpoint by which we look at the system of the vast seas with a very long term perspective.”

Address by H.E. Mr. Shinzo Abe, Prime Minister of Japan, at the Eighth Pacific Islands Leaders Meeting (PALM 8) May 19, 2018, Iwaki, Fukushima, Japan

http://www.mofa.go.jp/a_o/ocn/page4e_000824.html