やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

モンテーニュの「エセー」

ルソーの「善良なる野蛮人」のアイデア。フランスモラリストミシェル・ド・モンテーニュ(1533−1592)の『エセー』(1580年)にある「善良なる野蛮人」を参考にしたというがどのように書かれているのか気になって借りてきた。

この本はフランスのミッテラン大統領が手にして記念写真をとっている。モンテーニュの「エセー」それほど影響を与えた書物なのだが、一切知らなかった。。

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私が図書館で借りたのが関根秀雄訳の10センチくらいの幅がある本。宮下志朗さんという方がわかりやすい訳本を出しているらしい。

関根訳「随想録」1巻31章カンニバル(人喰い人種)がそれだと思われる。

モンテーニュが「エセー」書いたのは宗教戦争真っ只中であった。モンテーニュの言論は「相対主義」と「逆説」「パラドクス」好きであることを意識しながら読むべし、とある。31章カンニバルは南米で10年ほど暮らしたことのある下僕の話を参考に議論している。

モンテーニュは当時宗教戦争で酷い状態にあったヨーロッパを批判すべく野蛮人の世界を描いたようだが、かといってルソーのように両手を上げて、すなわちエデンの園のように描いたわけではない。現地の奇妙な、タイトルにある人喰いのような「野蛮」な習慣なども細かく描写している。

モンテーニュが好かれるのも頷ける。非常にわかりやすい文章だ。南米の先住民の話で、部勇者は妻をたくさん持っているだけなく妻たちがさらに多くの妻たちを見つけて来ることを書いて、これぞ「本当の夫婦の道」自分たち(ヨーロッパ)ではその逆、すなわち妻が夫に近寄る女を次から次へ払う退けるのとなんたる違い、みたいに書いている。聖書にすら妻たちは美しい腰元を夫に提供していることを書いている。ここはルソーやエンゲルスと同じか。

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どうやら、人権や自決権の源にモンテーニュや宗教戦争がありそうだけれど、これを深追いしているといつまでたってもダブ・ローネンの「自決権とは何か」という本に辿りつけないので、 宿題としたい