やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

「帝国主義研究」矢内原忠雄 読書メモ

チャタムハウスとコモンウェルスの論文を読んでいたら「帝国主義」と言う言葉が山程出て来て、誰もその言葉を定義、議論していないのが気になった。

矢内原の全集第四巻に「帝国主義研究」があったのを思い出しその中の2つの小論を読んだ。数年前読んで難しく理解できなかったが、今回はすらすらと頭に入った。博士2つ目に挑戦しこの3年勉強したかいが少しはあったのだろうか?

 

「帝国主義研究」には矢内原の戦前の論文11本が収められている。1930年前後の歴史的背景も今は少し見えるようになった。今回読んだ2本の論文は昭和5年、1930年に書かれている。満州事変の前年、軍国主義の軍靴の足音の前奏曲のころだ。

 

カウツキーとレーニンの帝国主義の論争を取り上げた「超帝国主義論について」と職業的軍人を生む仕組みを書いた「軍国主義・帝国主義・資本主義の相互的関聯」だ。

参考にしたのは矢内原全集第4巻1963年発行。

「超帝国主義論について」の82頁に「帝国主義」の語源が書いてある。1872年、英国の政治家ベンジャミン・ディズレーリがクリスタルパレスの演説で使用し、帝国連合を力説。政治運動のスローガンとなった。カウツキーはこの歴史的背景を理由に帝国主義は政策であって、レーニンの言う資本主義の一段階とは捉えないと主張。

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矢内原が最後にカウツキーとレーニンの違いを第二、第三インターナショナルの理論と政策の違いであるとまとめ、

改良主義 対 革命主義

社会民主主義 対 共産主義

ドイツ革命 対 ロシア革命

の相違とし、この違いはドイツ、ロシアの国内的、対外的政治経済の状況の違いである、と分析している。

カウツキーはウィキによると「マルクス主義理論の正統的な後継者の地位」でワイマル共和国の要職にもあったという。ナチに追われてアムステルダムで客死。

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「軍国主義・帝国主義・資本主義の相互的関聯」は以前読んでチンプンカンプンだったのを覚えているが、今回は驚愕するほど意味深長に受け止めた。

資本主義の圧力の下、農民・中小工業者がその犠牲となり、矛盾が現れ、封建的要素を維持しながら反資本主義となる。資本主義の発達によって国民の中に専門的職業的軍部が誕生する。これが独占的資本主義と結びついた「軍閥」なのであろう。

王の私的戦争だったものが、ルソーのせいで国民の戦争になったのである。民族主義が生まれたのである。民族の自決。分離独立。小国の乱立。

そして資本主義の矛盾として生まれた軍国主義が帝国主義の実行者となる。

1932年新渡戸の舌禍事件として有名な発言 ー 「日本を滅ぼすのは共産主義か軍閥、そのどちらが怖いかと問われたら、いまでは軍閥と答えねばなるまい」の軍閥とはこの職業軍人の事であろうか?

 

はやり理解できていない。あと、4−5回は読み返す必要がある。