やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

ヤップ島、米国人司法長官代理殺人事件

ミクロネシア連邦のヤップ州で、33歳の米国人女性が銃殺された。Rachel Bergeron女史は人権専門の弁護士で2015年ヤップにやってきた。子ども達の人身売買、中国企業が背景にある島の汚職と果敢に戦ってきた。

未だ犯人は捕まっていない。米国からはFBIが捜査に入っているという。FBの方のニュースをピックアップしているが、ここにまとめておきたい。

興味深いのがヤップの人たちからそのニュースはプロパがンダなのでシェアするな、と攻撃を受ける事である。殺人犯はヤップの人であろう。ということは彼らの親戚である可能性が大きいのだ。これが島社会の現実。

 

Husband speaks out on Bergeron killing By Louella Losinio 2019.10/17

グアムメディアのニュース。Bergeron女史は10月14日月曜日の夜、自宅前で殺された。ジョギングから戻ってきたところを狙われたのだ。ここのニュースには結婚記念一周年間近のご主人のコメントがある。島の極悪犯を起訴しようとした彼女の正義が個人的恨みになった可能性がある。

Bergeron’s grieving husband is also questioning whether her job prosecuting the island’s toughest criminals may have made her a target. 

 

Gov. Falan: 'Yap's spirit was broken by this senseless act' 2019.10.15

事件翌日のヤップ州知事の声明を紹介。FBIとミクロネシア連邦司法当局と協力し事件の解明に務める、と。Bergeron女史はワシントンD.C.、ニューヨーク、インドで人身売買など人権の専門家として実績がある。


Martyrdom against corruption in Yap By Jacob Nakamura

ミクロネシア政治家の腐敗について詳しく書かれている。中国人と繋がった腐敗した政治家に対し、今年知事になったファラン氏と共にBergeron女史が戦った事が書かれている。ハピネスリゾートに25億円の投資が約束されたがそれをファラン知事は破棄させた。

Kingma Holdings, a Chinese-based company, had a lease agreement to build a $25 million development called Happiness Resort.

さらに重要なのは下記の部分。今年始めに知事はFBIを招いて中国の島内での汚職捜査をしたのである。

Earlier this year the governor invited the U.S. FBI to investigate Chinese activities on the island and its connections to illegal development, human trafficking, and other transnational crimes. Ms. Bergeron had led the local effort in the Yap State government's cooperation with the United States.

この記事には、ヤップの腐敗を書いた米国人ジャーナリストを追放しようとした伝統酋長の話や、義理の息子と組んでマネロンなどの犯罪を行ったピーター・クリスチャン前大統領の件も取り上げられている。

 

RACHELLE BERGERON, ACTING ATTORNEY GENERAL OF YAP AND US CITIZEN, ASSASSINATED BY SLAVE TRADERS?
OCTOBER 15, 2019

事件翌日の記事。サンフランシスコの個人が発信しているニュース、のようだ。

この記事の特徴は殺人犯が島の有名な政治家で人身売買に手を染めていた人物の可能性を匂わせていることだ。人身売買が家族の恥であるため顕在化しない問題点。家族を支えるために女性が売春を行う件、等も書かれている。米国の調査で人身売買の危険地域であると指定されたミクロネシア連邦と、マーシャル諸島は投資・開発サークルで評判を落としたとの不平を述べている。

この記事にはさらに米国政治家がマーシャル諸島の妊婦を米国に連れてきて赤ん坊を売るビジネスを行い摘発されたことも書かれている。


信じられないかもしれませんが、これが太平洋島嶼国の現実です。この現実を知らずに海洋保護だ、環境保護だとやっている先進国の人々を私は心の底から軽蔑しています。

次に関連記事をまとめます。