やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

シーシェパードとインド太平洋

 

太平洋の島々を渡り歩いて30年以上がすぎた。その前半の15年は空に浮かぶ衛星通信、情報通信政策事業に集中した。そして2008年から海洋問題にいよいよ関与することになった。

実は海洋問題は極力避けてきたのだ。なぜか?

グリーンピースやシーシェパードとの関与が避けられない領域だ。しかし、2011年、SSがパラオに入り、一人でこれを退治しなければならなかった。日本政府、水産庁と外務省のやり方は杜撰だった。パラオに乗り込み、大統領(当時はトリビオン大統領)に怒鳴り込んだことがすぐさま世界中のニュースなってしまい、SSは「為て遣ったり」と喜んでいた。トリビオン大統領が協定にサインし(あの日、3月11日)のちに撤回した理由は米国からの圧力である。その圧力をしかけたのが私である。

話は複雑だ。

パラオの安全保障が米国に管轄下にあると言っても主権国家である。言う通りにしろ、と米国は出られない。しかし当時すでに私が立ち上げていたミクロネシア海洋安全保障の動きが止まる可能性がある、と米軍が知れば様子が変わる。今も昔も、ワシントンDCはミクロネシア諸国のことなど関心がないのだ。しかし日本が安全保障分野に出てきているとなると話が違う。「ウチの裏庭でしたよねえ」ということで日本の存在は必要だったのだ。

私はこれを情報操作で全て一人で動かしたのである。もちろんSSの情報も丹念に調べ上げた。

そのSSも粘る。2016年にもパラオにやってきて法律部門の支援をした。これを在パラオ日本大使館が評価するような情報をウェブに出していて、指摘したところ、すぐに削除したがどこかに魚拓が残っているはずだ。

さて、SSは何をしているだろう、と気になって検索したら上記のサイトが出てきた。

 

ワトソンは1977年、シーシェパード保護協会(当初はアースフォース)を設立した。その過程で、違法な密漁に対処するための独自の戦略、つまり "攻撃的非暴力 "と呼ばれるアプローチを開発しました。45年にわたる公海での活動で、シーシェパードは一人の負傷者も出さずに、何百もの違法操業を停止させたという。(記事から)

ワトソンは行動の人、なのである。海洋法執行に限りのある小島嶼国でまさに必要とされている存在なのだ。これを日本政府はできない。要請がないと動かないのだ。

シー・シェパード・コンサベーション・ソサエティとワトソンは、これまで頻繁に法廷に立たされてきた。ワトソンは逮捕され、刑務所で過ごし、2年間フランスのシャトーで亡命生活を送っている。南氷洋で日本の捕鯨船が関与した事件をめぐり、彼は現在もインターポールのレッドリストに掲載されている。殺人などの容疑で指名手配されている数千人とともにリストアップされている。(記事から)

小国が致し方なく、犯罪組織と手を結ぶのを30年見てきた。擁護する気はさらさらないが、日本が支援しなければSSは今後もパラオにやってくるだろう。