「奥さんは一人でいいが、ガールフレンドは多い方がいいですなあ。」
「いや、本当に。」
太平洋島嶼国から客人を招いた夕食会の席で、日本人の紳士2人がこんなたわいのない会話をしていた。
”世のお父さん達は外でこんな勝手なことをホザイているのか。それにしても60を過ぎて元気な事だ。”と思ったついでに、これも日本文化理解カモ?思い、隣のフィジーから来たジャーナリストに何を話しているかコソコソ訳した。
彼女はニヤニヤわらいながら、
「プロフェッサー、私のヒイおじいちゃんはには13人の妻がいたのよ。」
と話し出した。
「13人とは羨ましい。」
「ところがミッショナリーが来て、妻は一人にしなさい、とお説教されたので私のヒイおじいちゃんは、奥さんを一人を残して全員食べてしまいました。」
「‥・」
日本人紳士2人はショックを隠さず、黙ってしまった。
余計な通訳をしてしまった事を後悔し
「プロフェッサー、でもご安心ください。フィジーのカニバリズムは25年前に禁止なりました。」とこれも太平洋によくあるブラックジョークで場を和ませようと努力した。
しかし、このジョークも紳士二人には通じず、夕食の箸も進まないようで、かつ口数も少なくなり、急用を思い出したと言って帰ってしまった。
人食い、首狩り、生け贄、等々太平洋諸島の歴史にはよく出て来るが真剣に調べたいと思わない。それでどこまで本当でどこまでが嘘かわからない。
レストランを出た後、フィジーのジャーナリストに
「あれ、冗談だよね?」と聞いたら、白くて揃ったきれいな歯をキラキラさせながら、意味ありげな笑いを浮かべるだけであった。