やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

ミクロネシアの海洋汚染

ミクロネシアの海洋汚染

 10月5日、ニュージーランド北島座礁したコンテナ船の重油流出事故は日増しに事態が悪化しており、毎日トップニュースでメディアが伝えている。

 海洋汚染が人々の健康に直接害を与え、漁業、観光産業と広い経済活動にも大きな打撃を与えている。勿論海洋生物への影響は図り知れない。

 さらに船から落ちたコンテナが海岸に打ち付けられ、誰も責任を取らない、取れない状況は海洋事故の責任の所在といった複雑さも悲壮感と共に知らされた。

 さて、戦争中に太平洋諸島の沖合に沈められた船が老朽化し、重油を流出しており、それが脆弱なミクロネシアの海洋に影響を与えているというニュースは日本では殆ど取り上げられていないようなので、ミクロネシア連邦大統領府のニュースを下に簡単にまとめたい。

 ミクロネシア連邦チュック州の沖合に沈んでいる60隻以上の船が老朽化し、重油が既に流出、もしくは今後確実に流出する事が調査されたのが2008年。モリ大統領は、今年2011年9月にオークランドで開催されたPIF総会とニューヨークでの国連総会に先がけ、8月30日付けで、大統領の最終判断として国際的テーブルに上げる内容の書簡を在ミクロネシア日米大使に送った。

 調査結果によれば最終的に3千万ガロン(約132万リットル)が流出する可能性がある、という。これらの沈没船は殆どが第二次世界大戦中に沈められた日本船である。

 地域政府機関であるSPREPとSOPACによって2008年に報告書が発行された。そこには重油流出の海洋への影響が書かれている。同年国際NGOアースウォッチが実施した調査でも同様な報告がされている。

 産業が少ないミクロネシアのチュック州では美しい珊瑚と沈没船を求め、世界のダイビバー客が集まる。そしてモリ現大統領、ナカヤマ初代大統領の出身州でもあり、ここ10年以上、州行政の悪化状況が続いている。

ミクロネシア連邦大統領府ウェッブ

President Mori going international regarding oil leak in Chuuk Lagoon
Press Release #0911-09
Palikir, Pohnpei – FSM Information Services
September 12, 2011

http://www.fsmpio.fm/RELEASES/2011/september/09_09_11.html