やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

丸山眞男も読んでいた『平和の条件』

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日本国際政治学会というのがある。2つ目の修士論文の指導をいただいた渡辺昭夫先生と菊池努先生のご推薦をいただいて学会員にさせていただいている。 先日送られてきた学会誌にE. H .カーの記事があり、以前このブログでも取り上げた(*)彼の『平和の条件』が、猪木正道丸山眞男清水幾太郎、田畑茂二郎らにも読まれいた事を分析する論文を見つけ”良かったー”と感激したのでメモだけ。 * 『平和の条件』ー ウィルソンはんとトルーマンはんのせいどす 論文は20世紀イギリスの国際政治学に関する思想史的研究をされている、西村邦行博士のものだ。 「日本の国際政治学形成における理論の〈輸入〉―E・H・カーの初期の受容から」, 国際政治175号、2014.3 カーの『平和の条件』は小国を理解するのに、またそれにつながるEEZ問題を理解するのに避けられないはずなのだが、翻訳は絶版だし、昔の翻訳本も一部しか訳していない。ウェッブサーチをしてもこの本に関する書評とか見当たらないのだ。「太平洋島嶼国に真の独立を」なんて叫んでいる学者、専門家、外交官は絶対この本読んでない、と思う。 敗戦で日本が自分の事で手一杯。小国の独立運動どころではなかったことはわかる。 今はその小国を支援する立場である。なんで千人、2万人の国家が誕生したか、させたか。そこら辺からきちんと押さえておかずに国際支援や外交やってええんやろうか?と疑問に思っていたが、そこは日本の少なくとも猪木正道丸山眞男清水幾太郎、田畑茂二郎のアカデミックは押さえていた、と言う事を知ってなんだか安堵したのである。