捕鯨裁判と「アルバニー船団記念式典」日本海上自衛隊艦艇の参加
捕鯨裁判 ー 対太平洋島嶼国との関係イコール日豪関係なのである。よって、わからないなりに勉強しないとならない。間違っている可能性もあるが日本の国際法学者も知らなかったので、批判を期待して書いてみたい。
<豪州が主張する領土、EEZ>
学者も専門家もメディアもほとんど取り上げないが、捕鯨裁判核心の部分は南極海の豪州が宣言している領海、EEZの問題である。
南極大陸ー南極条約なるものがあり、その中の一つが「南極地域における領土主権、請求権の凍結」。で、主張、請求しているのがニュージーランド、オーストラリア、イギリス、フランス、ノルウェー、チリ、アルゼンチン。
下記の地図のオレンジの部分がオーストラリアが主張している領土である。かなり広い。
<日本政府が指摘した国際司法裁判所の管轄権の無効>
日本の捕鯨調査に対する豪州の攻撃。南極海で調査を止めれば捕鯨は反対しないよ、と言っていた時もある。即ち、本音は南極大陸の領土とそれにつながるEEZの確保である。即ち、本音は鯨なんかどうでもいいのだ。だって白人はさんざん鯨を殺してきたのだし、潜水艦による被害の方が大きいというニュースもある。
領有権 ー 先に宣言した方が勝ち、実行支配が優先する。スペイン・ポルトガル間のトリデシャス条約、サラゴサ条約、米国のグアノ島法等々。
南極大陸は自分たちの領土という主張に基づいて豪州は国際司法裁判所に訴えたのである。
訴えてこれが国際機関に取り上げられた事自体に意味がある。
ここを日本外務省は明確に指摘し、裁判所に管轄権がない事を申し立てている。
下記参照
日本政府代理人 鶴岡公二外務審議官による冒頭陳述 国際司法裁判所(ICJ)における「南極における捕鯨」訴訟(仮訳)平成25年7月2日 より 引用
14.この事件の別の側面は,豪州が,特別許可に基づく日本の捕鯨の地理的な範囲を豪州が南極海において独自に主張している排他的経済水域(EEZ)に限定していることにあります。多数の行為によって十分示されてきたように,豪州はこの海域において管轄権を行使しようとしています。日本は,南極の関係での豪州のEEZに関する主張は認めておりません。この事件の地理的範囲を南極海において豪州が主張している海域とその隣接海域に限定していることによって,豪州は,独自に主張しているEEZに関する立場を正当化しようとしているのでしょうか。それとも,実行はしていないけれども,自国が主張する南極のEEZにおいて捕鯨を禁止する措置をとればそうなるように,南極における自国の主張が試されることを避けようとしているのでしょうか。我々は,豪州が裁判所の管轄権を受け入れた際に付した留保の観点から,裁判所の管轄権について大いなる疑問を有しております。
日本政府代理人 鶴岡公二外務審議官による最終陳述及び最終申立て(仮訳)国際司法裁判所(ICJ)における「南極における捕鯨」訴訟平成25年7月16日17.より引用
裁判所長,裁判所の裁判官の皆様,それではこれから日本の正式な申立てを行います。
日本は,裁判所が次のことを判断し宣言することを要請します。
(1)- 裁判所は,2010年5月31日の訴状によって裁判所に付託された,豪州の日本に対する請求について管轄権がないこと。
- そして結果として,豪州が日本に対して開始した手続についてニュージーランドが行った参加の許可の要請は失効すること。
(2)あるいは,
- 豪州の請求は却下されること。
結果はみなさんご存知の通り。国際司法裁判所は豪州のそしてニュージーランドの南極大陸領土権を認めたのです。(結果的にそういう事だと思う)
豪州は自分が主張し、国際司法裁判所が認めた(そのつもりはなかったのかもしれないが)、だけど国際的には認められていない南極海から日本を追い出す事に成功したのである。
ところで日本の捕鯨調査。鯨資源だけが目的ではないはずだ。南極大陸及びその海域での実績作りが将来の日本の安全保障に与える影響は計り知り得ない。
<豪州、表玄関に日本海上自衛隊を招く>
最後に本題。この4月に日豪首脳が、そしてこの6月に日豪防衛外務大臣2+2が合意し段取りしている「 アルバニー船団記念式典」日本海上自衛隊艦艇の参加。(このきっかけを作ったのが、当方がこの2月に実施した笹川平和財団のキャンベラ出張での協議である。)
アルバニーとはどこか?日本の調査捕鯨船も立ち寄るフリマントル港の近く、豪州西南パースの近くである。1897年にフリマントル港が商業港として開港するまでアルバニーは主要な港であった。第一次大戦時はヨーロッパに向け船団が出発したのである。現在人口は約2万5千人。南半球の最後の捕鯨拠点でもあった。(写真左、鯨博物館もある!)
日清戦争以来、豪州の脅威は日本なのである。ANZACは日本海軍に守ってもらった記憶を消去し、侵略国家日本のイメージを持ち続けた。日本バブルの頃はANZACデーに日本人は出歩くな、というアドバイスもあったと聞いている。
私も現場で数々の、この豪州のパラノア的反応を、攻撃を受けて来たので明言する。一例。豪州海軍は民間人の豪州ビリオネラーと共同謀議までして、日本財団が支援するミクロネシアの小さな監視艇事業を中止させようとしたのだ。勿論、レメンゲザウ大統領もクアルテイ外相もそんな共同謀議は相手にしなかったし、逆に豪州の信用を落としただけの結果となったであろう。
太平洋が豪州の裏庭であれば、南極海は豪州の表玄関である。
日本の捕鯨調査船を追い出した矢先に、豪州はそこに、アルバニーに日本海上自衛隊艦艇を招いたのである。そこには豪が日清戦争以来持ち続けた対日イメージの変換が、末期的オランダ病の症状と重なって、南極領土問題と軍事協力、特に海洋安全保障協力を通して、「積極的平和主義」の方向に揺り動かされているような気がする。
答えは多分、南極海の共同調査・開発であろう。