やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

お能が睡眠薬でなくなる時

四十数年、西洋音楽をばかりやっているが日本伝統芸能も気になっている。

学生の時にお能を観る機会が何度かあったが、暖かい室内の能楽堂で、意味のわからない、唸っているような音楽と、四角の狭い舞台を行ったり来たりしているだけのお能は、効き目最高の「睡眠薬」だった。

それが、睡眠薬でなくなった瞬間がある。

家の近くの矢来能楽堂で開催されていたお能講座で、舞と謡を習った時だ。

(まだやってはります。http://kanze.com/lesson

習ったと言っても体験講座で、触った程度。

それでも、その時を境にお能を鑑賞しても眠らなくなった。声の出し方、足の運び、腕のあげ方、自分が舞台にいるような感覚。

それから年に数回程度だが、お能を観る機会を積極的にもうけている。

その内、自分でも謡ったり、舞ったりしてみたい、と思う様になった。

西洋人社会の中で、スカラッティのイタリア歌曲や、シューベルトのドイツリートを歌ったり、ベートヴェンやショパンピアノ曲を弾いたりしていると「リエコ、日本の音楽は?」と聞かれ「ウッ」と唸る場面が何度もあったのだ。

海外に出てから日本の歴史や文化が急に気になりだしたのだ。

あの有名な「高砂」も歌詞の内容は、松の精霊が人間に化ける話である。

こうなると太平洋島嶼国の神話にも近い。

お謡を一度、太平洋の島の人に披露してみたい。。